The previous night of the world revolution~T.D.~
…。

待たされること、およそ30分。

あまりにも待たされるから、もう帰ろうかなぁ、帰りたいなぁ夕飯何にしよう、と考え始めていた頃。

ようやく、『赤き星』サークルの部室の扉が開いた。

あぁ。開くのかそこ。

もう帰るところだったよ。

「話し合いは終わったから、入って」

「はい」

お待たせ、くらい言ってくれても良さそうなものを。

何処までも上から目線と言うか…。

完全に、僕を同列とはみなしていないよね。

折角書いた論文も、無駄になったかなと思ったが…。

…なんと。

思わず、声が出そうになった。

長テーブルを囲む、六つあったパイプ椅子が。

七つに増えている。

これって、まさか…。

「どうぞ、座ってください」

ようやく、サナミア党首から着席の指示が出た。

長かった。

またここまで来ても立ちっぱなしだったら、さすがに嫌味の一つでも出るところだった。

そして。

僕が座る為の椅子が、それも、この長テーブルを囲む椅子が用意されたということは。

聞かなくても、自ずと彼らの結論は推測出来るというものだ。

「考えて頂けましたか」

僕は、自分からそう尋ねた。

「僕の熱意、決意、覚悟は、伝わりましたでしょうか」

「…はい。よく伝わってきました」

と、答えるサナミア党首。

「皆でこれを読み、話し合った結果…。私達は、あなたを『赤き星』の一員として認めます」

「ありがとうございます」

ぺこりと、軽く会釈して見せたが。

内心ガッツポーズしていた。

これで「やっぱり駄目な」って言われたら。

もっと面倒なことになっていた。

しつこく食い下がるか、どうしても駄目と言うなら、この部屋に盗聴器やカメラを仕掛けまくる、とか。

どちらかと言えば、ルリシヤさんのジョブに近いことを、しなければならないところだった。

セカイさん、僕達の努力は認められましたよ。

「あなたには、既にルティス帝国を改変させるコミュニストとしての、素質が備わっています。私達は、そう判断しました」

「…光栄です」

ルティス帝国の…改変、ねぇ。

何を、どう改変させたいのか知らないが…。

とにかく、目的である『赤き星』への潜入は、成功した。

今は、それを喜ぶべきだろう。

このときの僕には、まだ知る由もなかった。
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