The previous night of the world revolution~T.D.~
「何だろうな、今日の議題」

「さて、何でしょうね」

今日は珍しく、下級生の俺達の方が、先に『ルティス帝国を考える会』サークルの活動拠点である講義室にやって来ていた。

俺の隣にいるのは、仮初の友人となったエリアスである。

「ちょっと飲み物もらってくる。ルナニア、何が良い?」

「紅茶お願いしまーす」

「はいよー」

初日は、緊張のあまり自分達で飲み物も注げなかったものだが。

今となっては、お茶をもらうことくらい平気で出来る。

『ルティス帝国を考える会』に入会して、分かったことがいくつかある。

彼らは、話している内容は確かに政治討論という、小難しくて頭を悩ませるような議題ばかりだが。

やっていることや、話しているときの態度は。

普通の、楽しい学生サークルなのだ。

…まぁ、唯一一名を除いて、だが。

「はい、紅茶」

「ありがとうございます」

見ての通り、同じサークルメンバーのエリアスも、この気さくぶりだもんな。

最近では、一年生の方から発言することも増えていった。

上級生達が、遠慮なく俺達一年生に、発言を促すからだ。

それに彼らは、俺達みたいな一年坊主の意見も、それなりに尊重してくれる。

そりゃあ、一年生でも居心地は良いはずだ。

そんなもんだから。

「なぁ、ルナニア」

「何ですか?」

「今度、あいつらも『考える会』に誘おうぜ。あいつらも、興味持ってるみたいだったし」

「成程、それは良いですね」

エリアスの言うあいつら、とは。

俺が心の中で、ABCと呼んでいる三人のことだ。

特にCの奴は、入学当初から『ルティス帝国を考える会』に興味を持っているような素振りを見せていたからな。

俺とエリアスが勧誘すれば、案外あっさりと入りそうだ。

…そして、その「あっさり入れる」ことが問題だ。

『ルティス帝国を考える会』なんて名前で誤魔化し、優しい上級生達の存在で、目眩まししているのかもしれないが。

実のところこのサークルは、現在のルティス帝国の政治体制に反する、共産主義集団なのである。

言い方は悪いが、国にとっては、レジスタンスの前身みたいなもの。

そんな集団に、あっさり入れているこの状況。

そこが問題だ。

つまりそれだけ、共産主義という思想に、抵抗を覚えてない若者が増えてるってことだから。

全く、あのルチカおばさん。

ブタ箱に入ってもなお、とんでもない「置き土産」を残していってくれたものだよ。

やれやれ。いつだって善良で、徳しか積んでいない、立派な大人の鑑である俺を、少しは見習って欲しい。
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