The previous night of the world revolution~T.D.~
いかに『ルティス帝国を考える会』が、気楽な学生サークルと言えど。

彼らが、少なからぬ現体制反対派の集団であることには変わりない。

故に。

「さぁ、今日の議題は何にしようか。誰か案のある人は?」

「はい」

俺は、率先して挙手した。

一つは、スパイ目的。

もう一つは、ちょっとしたルーシッドへの嫌がらせである。

「お、一年生だね、名前は確か…」

「ルナニアです。ルナニア・ファーシュバル」

「そう、ルナニア君。どうぞ、積極的に意見して」

「今日は、帝国騎士団について話し合うのはどうでしょうか」

俺は、自らそう提案した。

そして。

「良いね、皆どう思う?」

「悪くないと思うよ」

「俺も賛成」

特に異論は無し。

そうだろう。彼らにとっては、帝国騎士団という組織は、目の上の瘤のようなものなのだから。

話し合い…もとい。

悪口大会は、いくらでも開催出来る話題だ。

「よし、じゃあ今日は帝国騎士団について話そうか。意見のある人はどうぞ」

エリミア会長が、そう促すと。

待ってましたとばかりに、サークルメンバー達が口々に。

「帝国騎士団か…。実質、ルティス帝国の独裁者みたいなものだよな」

「王制と貴族制度を支える、厄介な柱でもあるわよね」

「自分達の特権を利用して、私腹を肥やしてる。腐敗した為政者ですね」

悪口大会、開幕。

いやぁ、皆食いつくねぇ。

皆が食いつくような話題を、わざと出したんだけどね。

存分に食いついてくれ。

「…」

自分達の特権で好き放題やっている、と言われたルーシッドは。

険しい顔で、間接的に自分に向けられる罵倒を聞いていた。

彼にとっては、大変不愉快だろうな。

ふふふ。

「そもそも帝国騎士団なんて、ルティス帝国には必要ないんだよ」

とうとう、そんな意見まで出てきた。

出た。帝国騎士団なくせ論。

その気持ち、分からなくもないよ。

目に入るだけでうぜーもんな。特にオルタンスとか。

更に。

「同感です」

「ルティス帝国を腐敗させるだけの組織なら、必要ない」

「帝国騎士団が国の中枢を握ってるから、いつまでたってもこの国は進歩しないんだ」

わらわらと、帝国騎士団排除論者が台頭。

いやぁ皆さん、過激ですねぇ。

すると。

「帝国騎士団の存在が、ルティス帝国の進展を妨げているというのは、どういう意味ですか?」

早速、我慢出来なくなったらしいルーシッドが。

すかさず、口を挟んだ。

おいおい、もう少し言いたい放題言わせてやれば良いものを。

もう我慢出来なくなったのか?

堪え性ないなぁ。
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