The previous night of the world revolution~T.D.~
「どういう意味って…。それは、言葉通りの意味だよ、ルーカス君」

ルーカスとは、ルーシッドの偽名である。

ルーカス・トラーナ。

適当だろ?

「それどころか、帝国騎士団が国の進歩を阻害している」

「そう。国民を支配することしか考えてないから」

「そうやって国民を支配することで、自分達の特権を守ろうとしているんだわ」

皆さん、言いたい放題だな。

そんな中、ルーカスならぬルーシッドは、一人抵抗を試みた。

「本当にそうですか?俺はそうは思いません。むしろ、どうして皆さんが帝国騎士団を目の敵にするのか分かりません」

「ルーカス君…。帝国騎士団は、私達国民を支配しているのよ。それ以外に、彼らを厭う理由が必要?」

「支配というのは…国民の人権を無視し、一方的に国民から搾取するだけの、圧制者に使う言葉でしょう?俺の目から見たら…帝国騎士団は国民を支配しているのではなく、統治しているだけだと思うのですが」

うん。

君達は、そのつもりで国政を担っているんだろうね。

支配と統治。その間には、実は紙一重の差しかない。

物は言い様って奴だよ。

「俺は、帝国騎士団はその圧制者だと思うんだよ」

「どうしてですか?」

「君が言ったんじゃないか。国民から一方的に搾取している、って。違うかい?帝国騎士団は、俺達から一方的に搾取するばかりで、その富を貧しい国民達に還元することなく、自分の懐にしまい込んでいる」

「…」

「ルティス帝国の進展が阻害されているのは、そのせいだわね。彼らは、自分達の保身しか考えていない」

…何を持って、帝国騎士団が自分達の保身しか考えていないと判断しているのか知らないが。

ルーシッドの顔からして、そんな具体性に欠ける説明で、納得していないのは明らか。

俺ですら、この意見には賛成出来ない。

「本当に、帝国騎士団が保身のことしか考えていないなら…。ルティス帝国は今頃、かつての隣国箱庭帝国の憲兵局のような、独裁体制が敷かれているでしょうね」

そうだろうな。

しかし、かつての箱庭帝国がどんな国だったか、ほとんど知らされていないサークルメンバー達は。

「似たようなものじゃない?憲兵局も帝国騎士団も。独裁しているという点では共通してるわ」

「帝国騎士団が箱庭帝国の開国に協力した…っていう話も、本当か嘘か、分かったものじゃない」

「同感だ。俺はあの革命を、箱庭帝国に首を突っ込んで掻き回して、結局恩を売りつけただけだと思ってる」

「そうよね。箱庭帝国は、帝国騎士団のパフォーマンス用に…体良く、美談作りに利用されたされただけじゃないかしら」

事実を知らない馬鹿共が、あまりにも馬鹿なことを言ってて、噴き出しそう。

今ここにルアリスがいたら、きっといきり立って抗弁しただろうな。
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