The previous night of the world revolution~T.D.~
丁度良い。ルーチェス嫁の護衛の件、ルヴィアに頼んで帰ろう。

折角、家隣なんだし。

ルーチェス宅を出て、すぐ隣の、ルヴィアの家のインターホンを押す。

「…」

…誰も出てこない。

…いないのかな?

何処か、外食しに行ってるとか…。

仕方ない。それなら明日改めて…と思っていると。

ふと、ルヴィア宅の玄関の扉が、僅かに開いてることに気づいた。

おいおい。鍵開けっ放しかよ。

不用心だな。

ってか、中…人、いるのか?

「…」

俺は少し迷って、それからそっと玄関の扉に手を掛けた。

ルーチェス嫁のことを頼むなら、出来るだけ早い方が良い。

折角ここまで足を運んだのだから、出来れば直接会って話したい。

「…ルヴィア?いるのか?」

そっと扉を開けて、部屋の廊下に声をかけると。

リビングの方から、声が聞こえてきた。

「はい、フューニャ。これ、この間言ってたケーキ屋の、プリンタルト」

「本当に買ってきたんですね。遠いのに…」

「あのくらい何でもないよ。フューニャの為なら」

…。

…そういや今日ルヴィア、昼過ぎに。

「今日用事があるんで、早めに帰って良いですか?」とか言ってきたな。

特に考えず、「別に良いよ」と答えたが。

まさか、用事ってそれ?

その、遠くに売ってるケーキ屋に行く為だったのか?

…早退、許可しなきゃ良かったかな。

「美味しい?」

「むぐむぐ…。はい、美味しいです」

「そうか!良かった」

…。

「ルヴィアさんもどうぞ」

「え?俺は良いよ。それはフューニャにと思って買ってきたんだから、フューニャが全部食べれば…」

「私にだけ食べさせて、私だけ肥え太らせようだなんて、そうは行きませんよ。あなたも食べて、そして一緒に肥え太るんです」

「え、あ、むぐ」

「…美味しいでしょう?」

「…うん、凄い美味しいよ。ありがとうフューニャ」

「…別に私は、ルヴィアさんがタルトを買ってきてくれたからって、嬉しくなんかないんですから」

「…」

「…嬉しくなんかないんですからね」

「ふっ…ふ、フューニャぁぁぁ…!」

…。

俺は、そっと玄関の扉を閉め。

何も聞かなかったことにして、帰宅することにした。

…。

…。

…爆発してしまえ。
< 154 / 820 >

この作品をシェア

pagetop