The previous night of the world revolution~T.D.~
スパイ活動の原則は、目立ち過ぎてもいけないし、全く目立たないのも駄目だ。

あくまで平凡で平均で、何の害もない有象無象の一人であるべきだ。

しかし。

『帝国の光』は秘密主義の組織。

表向きの顔の裏に、そう、さながら俺の仮面のように、彼らには裏の顔がある。

果たして彼らは、有象無象の一人でしかない俺に、裏の顔を見せるだろうか?

…恐らく、それはない。

ここにいる新人達の大半は、きっと有象無象の一人となる。

そして有象無象の彼らは、あくまで『帝国の光』の表向きの組織を構成し、目眩ましの役割に使われるだけ。

これは、そういう試験なのだ。

組織にとっての表向きの顔を構成する有象無象と。

そうでない、組織の本当の顔を構成する、選ばれた党員を選別する為の試験。

だとしたら、俺はどうするべきか。

試験結果を操作し、有象無象になることは簡単だ。

だが、それでは『帝国の光』の、表向きの顔しか見ることが出来ない。

表向きの顔をいくら見ても、意味がない。

危険なことは分かっている。

それでも俺は…俺が、スパイとして潜入したからには。

危険を犯してでも、『帝国の光』の本当の顔を見るべきだ。

そうでなければ、潜り込んだ意味がない。

そう決断した俺は、一般常識試験と小論文を、本気で回答した。

多分一般常識試験の方は、全問正解だろう。

小論文の採点結果は知らないが、恐らく高得点を取っているものと思う。

で、次の面接試験も。

いかにも共産主義者が望むような、模範解答をしてあげた。

何なら、俺が力説し過ぎて、面接官の方が押され気味だった。

まぁ、これだけやっておけば大丈夫だろう。

…ところで。

そんな俺でも、面接試験のとき、ちょっと困る質問をされた。

そう、俺のアイデンティティである、仮面についての質問だ。
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