The previous night of the world revolution~T.D.~
「『帝国の光』には、表向きの顔と、裏の顔の二つがある」

「…」

…それは、知ってるが。

まさか党首自らが、その事実を公然と認めるとは。

「表向きは、コミュニズムを少しでも齧っているなら、誰でも歓迎する共産主義団体。要するに目眩ましだな。大多数の党員がこっちに…『裏党』の反対だから、『表党』だな。党員の大半はその、『表党』に入ってる」

俺と一緒に、適性試験を受けた新人達。

その大半が、目眩ましの為の『表党』に入ったと。

そして、俺だけはここに連れてこられた。

適性試験を受けた結果、俺だけは『裏党』に入る資格があると判断された訳だ。

「『裏党』では、どんなことを?」

「こんなことだよ」

総統は、鉄格子の向こうを指差した。

成程。

血生臭いことを、何でもやってるって訳か。

「俺を含め、『裏党』にいるのは、熱心なコミュニスト達ばかりだ。『天の光教』から流れてきた者もいる」

お前も、その『天の光教』から流れてきた一人なのか、と。

聞きたいと思ったが、俺は聞かなかった。

まだそのときではないし、『天の光教』と『帝国の光』が繋がっていることを、俺が知っているのは不自然に見えるだろう。

「悠長なことはしていられない。一刻も早く、ルティス帝国は変わらなければならない。それは君も分かるだろう?」

「そうだな」

条件反射のように答えたが、それはあくまで建前だ。

「腐った社会だよ、今のルティス帝国は」

ヒイラ総統は、吐き捨てるようにそう言った。

「うんざりするようなことばっかりだ。王族や貴族達、その後ろ盾である帝国騎士団だけが特権を持ち、俺達のような一般人には、入り込む隙なんて皆無に等しい」

「…」

「この独裁政権を、誰かが打破しなければならない。箱庭帝国が、その良い例だろう?」

…ルレイア先輩が、常々名前を忘れる彼のことだな。

あの頃はまだ、俺は『セント・ニュクス』にいたから、あの革命についてはそれほど詳しくないが…。

ともかくあの国は、ルアリスという一人の人物が立ち上がって、彼に呼応する人々もまた立ち上がり。

長らく箱庭帝国を支配していた、憲兵局という独裁政権を打倒し、民主的な国を手に入れた。

そして。

今度はルティス帝国でも、同じことを起こそうとしている者がいる。

ここに、俺の目の前に。

それが、このヒイラ・ディートハットという人物なのだ。
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