The previous night of the world revolution~T.D.~
…と、そういう訳なので。

俺は『帝国の光』の、『裏党』に入党を果たした。

ヒイラ総統の手を取ってすぐ、俺は早速、ヒイラ総統に連れられて、エレベーターの前にやって来た。

二基あるエレベーターのうち、片方には「故障中」の札が貼られていて、使用出来なくなっている。

だから、エレベーターに乗るなら、もう片方の、稼働中の方に乗らなければならない。

はずなのに。

ヒイラ総統は、平然と「故障中」のエレベーターの方に近づき、上に登るボタンを押した。

故障しているはずのエレベーターが、俺達の前で止まり、扉を開けた。

「さぁ、行こう。『裏党』のフロアに案内するよ」

「…分かった」

俺は、ヒイラ総統に連れられ、エレベーターに乗り込んだ。

見たところ、壊れている様子はないが。

乗った瞬間、フリーフォールみたいに墜落したりしないよな?

総統は、ビルの一番上の、八階のボタンを押した。

…?

『帝国の光』が借りているフロアは、四階だったはずだが。

八階も借りてるのか。

「…ん?あぁ、このビル、借り物じゃないんだ。実はまるごと『帝国の光』のものなんだよ」

「…成程」

エレベーターに、あんな陳腐な細工をしている理由が分かった。

一般の、『表党』の人間は、「故障中」ではないエレベーターで、四階しか行けない。

だが『裏党』の人間なら、この「故障中」エレベーターで、それ以外の階にも行けると。

その秘密を知らされることこそ、『裏党』の人間の特権なのだろう。

「勿論君も、こちらのエレベーターを使って良いよ」

「分かった」

その時点で、俺は疑問を抱いていた。

それを口にするべきか否かは、これから待ち受けているものを見てから、決めるとしよう。

エレベーターが、八階に到着した。

「さぁ、こっちだ。皆に挨拶するよ」

エレベーターから降りると、目の前に、大会議室の大きな扉があった。

このフロア全体を占める巨大な会議室。

ここが、『帝国の光』の中でも、特に重要な…『裏党』の本拠地ということか。

で、その中にいるのが…。

ヒイラ総統が、重い扉を開けた。

すると、その先にいたのは。

俺と同じく『裏党』のメンバーに選ばれた、選りすぐりの『帝国の光』党員が勢揃いしていた。
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