The previous night of the world revolution~T.D.~
「ここに来る何人かに、同じことを聞かれたよ。党員の中で差をつけるのは、平等主義の指針に反するんじゃないかって」

ほう。

俺みたいなにわかコミュニストが思いつくことは、熱心なコミュニストなら、当然気づくことらしい。

「俺もそう思ってる。出来ることなら、皆を同じように扱いたい。党員皆をここに連れてきて、皆で話し合いたいよ」

「なら、何故それをしない?」

「君は頭が良いから、分かってるんじゃないか?」

「…」

俺が答えずにいても、ヒイラ総統は気にせずに続けた。

「残念なことに、同じ『帝国の光』の党員でも、まだ党員の中には温度差がある。ほんの腰掛け程度に入党する者もいれば、俺達みたいに、心からルティス帝国を変える為に、ここでの活動に命を懸けている者もいる。そんな両者が、相容れることが出来ると思うか?」

「…思わないな」

「そうだろう?今はまだ、そのときじゃないんだ。ルティス帝国民の全てが、コミュニズムを理解し、賛同している訳じゃない」

それは分かってるんだな。

自分達が、現在のルティス帝国にとって異端者であることは、ちゃんと弁えている訳だ。

「俺達はこれから、少しずつ時間をかけて、大勢のルティス帝国民に理解してもらわなきゃならない。これからのルティス帝国の在り方について」

「…」

「今は、その準備期間なんだ。この大事な準備期間に、温度差の違う党員達が混ざったら、きっと反発する者が現れる。『帝国の光』には、まだその反発者を抑える力がない。だからこうして、選抜メンバーだけを重要なポストに置いている」

…自分達に「まだ力がない」とハッキリ言えるというのは、お前の強みだな。

「勿論、他の党員を差別する気持ちは全くない。彼らには、少しずつ俺達の掲げる思想を教えて、いずれはこの『裏党』に加わるほどの、熱心な党員になってもらおうと思ってる。実際今ここにいる党員の中には、もとは『表党』だったけど、少しずつ俺達の思想に染まって、『裏党』に加わった人もいるんだ」

『表党』に分類された者でも、一応「出世」のチャンスはあるんだな。

「そうしていれば、いずれは『帝国の光』内の格差もなくなる。そしてその格差がなくなり、表と裏に分ける必要がなくなったとき…。そのときこそ、準備期間の終わりだ」

「準備期間が終わったら、どうなるんだ?」

この際だ。

『帝国の光』が何を目指しているのか、聞いておこう。

「それは決まってる。ルティス帝国を、共産主義国家に変えるんだ。革命だよ」

「…」

…前述の通り、俺は箱庭帝国の、ルアリスの革命には参加していない。

だが。

ルアリスはきっと、こんな風に、笑顔で革命の二文字を口にした訳ではないだろう。
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