The previous night of the world revolution~T.D.~
笑って言うことじゃない。

この男は、分かっているのだろうか。

国を変えること、革命を起こすこと、政府のお偉方に逆らうことが。

少なからぬ、無辜の民の流血を強いる行為であることを。

分かっていて、それを必要な犠牲と呼ぶのだろうか。

…そうなんだろうな。

それが革命と言うものだ。

帝国騎士団長、あんたはとんでもないところに、俺を送り込んだものだ。

八階から飛び降りるより、余程恐ろしいことを考えているようだぞ、ここの連中は。

「とはいえ、道のりはまだまだ長い。君のような、賢くて頭の切れる人材が必要なんだよ」

「…」

「ここで一緒に、ルティス帝国を変えよう。志を同じくして、ルティス帝国を在るべき国に変えよう。皆で」

…そうか。

この場にいる全員。

この、屈託のない無邪気な笑顔に騙されて、ここにいるのか。

そうだな。

俺だって、『セント・ニュクス』にいなければ…。

…グリーシュに、出会っていなければ。

もしかすれば、喜んでこんな組織にでも入っていたのかもしれない。

でも俺は、違うから。

俺が選んだのは、もっと別の道だから。

例えここが、猛獣の餌箱の中なのだとしても。

「…ルニキス・エリステラだ。宜しく頼む」

俺は、もう捨てたはずの名前を名乗った。

この名前を使えば、もしかしたら。

今は亡き友が、俺を猛獣達から守ってくれるのではないかと、そんな願掛けを込めて。
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