The previous night of the world revolution~T.D.~
その日は。

ほとんど話し合いをすることもなく、そのまま解散となった。

恐らく彼らは、ただ俺が加入したことを知らせる為だけに集められたのだろう。

俺も帰ろうと思ったが、その前に俺は、例の受付お姉さんに呼び止められた。

この人も、あの紺色の制服を着て、赤い星のピンバッヂをつけていた。

『裏党』の人間だったんだな、このお姉さんも。

「同志ルニキス、これを」

「あぁ…」

彼女は、俺にも真新しい紺色の制服と、大事そうに緩衝材にくるまれたピンバッヂを渡してきた。

「『裏党』の呼び出しがあったときは、この制服を着用し、ピンバッヂもつけてきてください。それが、党員の証となります」

「分かった」

俺も、このダサ、いや…名誉ある制服を着なければならないのだな。

ルレイア先輩だったら、卒倒してるだろうな。

いや、でも彼も今、大学に潜入中だから、いつものゴスロリ服は着られないんだっけ。

好きな格好を出来ないというのは、地味にストレスだな。

まぁ、仮面を外せとは言われなかったので、良かった。

仮面を外すことを要求されたら、真剣に八階から飛び降りることを検討しなければならないところだった。

制服とバッヂを受け取り、ようやく帰れるかと思いきや。

「同志ルニキス、こちらも」

受付お姉さんは、今度は鍵と、住所を書いたメモを渡してきた。

…何だこれは?

「これは?」

「『裏党』の党員となった者には、『帝国の光』が所有するアパートに入居することが出来ます。ここからも近いので、便利が良いですよ」

何だって?

「…社宅みたいなものか?」

「そう考えて頂ければ結構です。でも、強制ではありませんので。ご自身も、昼間の生活がお有りでしょうし」

「…」

「良ければ使ってください。家具も一通り揃っているので」

「…分かった。ありがとう」

そう答えると、ようやく受付お姉さんは立ち去った。

潜入用のマンションは、『青薔薇連合会』の方で調達していたんだが…。

わざわざ社宅まで用意されたということは…そこに住めという、無言の圧力なのだろう。

…従わざるを得ないだろうな、スパイとしては。

ようやく彼らの内側に入り込めたのだ。好意は有り難く受け取り、角が立たないよう振る舞うべきだ。

…だから。

「ルニキス。この後、ちょっと時間あるか?食事にでも行こう」

「…ヒイラ総統…」

彼の、この傍迷惑な…改め。

有り難い申し出にも、快く快諾しなければならないのである。
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