The previous night of the world revolution～T.D.～

…と言うか。

「今日からどうぞお引っ越しください」と、鍵を渡しておきながら。

その後、すぐ食事に誘い出すとは。

引っ越させる気はあるのか。

それはそれ、ってことなんだろうな。

まぁ、今日中に引っ越し完了しろと言われてる訳じゃないし。

幸い、俺も潜伏先に着いたばかりで、ほとんど荷解きはしてないからな。

家具も揃ってるって話だし、荷物をまとめ直して、さっさと入居すれば良いだろう。

…それで。

ヒイラ総統に連れられて、一体今度は何処に連れて行かれるのかと思ったら。

お洒落なバー…でもなく。

ホテルのレストラン…でもなく。

ルティス帝国全国に展開している、ファミレスチェーン店だった。

食事に誘い出しておいてファミレスかよ、と思わないでもなかったが。

表情には出さなかった。

全国のファミレス愛好家を、敵に回すつもりはないからな。

そして、目の前にいるヒイラ総統も。

彼は、チーズがたっぷり乗ったハンバーグセットを注文していた。

俺は何にしようと考えて、ゲストがホストより値段の高いメニューを頼むのは良くないだろう、と配慮し。

無難に、今日のおすすめランチを注文した。

と言っても、たかだかファミレスなので、そんなに値段の差はないのだが。

精々百円ちょっと安いだけ。

あ、でも一応、二人共ドリンクバーはつけた。

で、注文したメニューが届くと。

ヒイラ総統は、これが『帝国の光』の党首なのかと疑うほど、無邪気な笑顔を浮かべて。

それはそれは美味しそうに、ハンバーグをもりもり食べていた。

部活帰りの高校生みたいだな。

おすすめランチを食べながら、俺はそう思った。

ちなみに、今日のおすすめランチはトンカツ定食なので、俺も部活帰りの高校生だな。

青春の味がするよ。嘘だけど。