The previous night of the world revolution~T.D.~
「…幻滅したか?」
ハンバーグを食べながら、ふと思い出したように総統が言った。
「何に?」
「食べに行こうって、こっちから誘ったのに、ファミレスかよって」
「いや…別に」
ちょっと思ったけど、あくまで気にしてない振りを装う。
が、
「ごめんな、分かってるんだけど。でも『帝国の光』も、そんなに資金が潤沢にある訳じゃないし。無駄遣いする訳にはいかないからな」
「…」
そうだな。
平等主義を掲げる彼らが、贅沢にフレンチフルコースなんて食べてたら、ダブスタも良いところ。
「…それにさ」
「?」
「恥ずかしい話かもしれないけど、俺、昔からファミレスのハンバーグが大好きだったんだよ」
小さい頃から、部活帰りの高校生だった訳か。
「好きだったと言うか…憧れてた、の方が正しいかな」
「憧れてた…?」
「はは、おかしいだろ?ファミレスのハンバーグが憧れって。でも、俺が生まれたのは地方の貧しい都市で、家も貧乏だったんだ」
唐突に、総統の昔語りが始まった。
ここは黙って聞くべきだな。
何なら録音しておこうと、俺はこっそり自作して、ポケットに仕込ませてきた、
『これであなたも名探偵★いつでも何処でも盗聴器』のスイッチを押した。
え?何でそんなもの持ち歩いてるのかって?
スパイのたしなみだろ。
バッテリーの持ちが12時間しかないので、必要なときしか使えないのが欠点だな。
改良の余地ありだ。
それはともかく。
「うちは自営業…って言えば聞こえは良いけど、便利屋みたいなことをして日銭を稼いでたんだ。家はボロいバラックみたいなところで、車なんて当然持ってなくて、ガラクタ同然の自転車だけが、唯一の移動手段だったな」
「…そうなのか。大変だったな」
「そう、大変だった。だから、たま〜に、年に一回か二回くらいだな。何かの記念日に、ファミレスに連れてってもらって、そこでハンバーグ食べさせてもらうのが、凄い楽しみだった。今みたいに、ドリンクバーまで頼む余裕はなかったけど」
セットについてるドリンクバーなんて、ほんの数百円なんだけどな。
世の中には、そのほんの数百円さえ、惜しまなければならない人々がいるのだ。
幸いなことに、俺はそういう生活とは無縁だったが。
でも、そういう人がいるということは知っている。
「だけど、それも十歳になるまでのことだった」
「…?どういう意味だ?」
「母親が死んだんだ」
…さっきまでも、かなりヘビーな話だったが。
「死」というワードが出てきて、更に話が重くなってきた。
ハンバーグを食べながら、ふと思い出したように総統が言った。
「何に?」
「食べに行こうって、こっちから誘ったのに、ファミレスかよって」
「いや…別に」
ちょっと思ったけど、あくまで気にしてない振りを装う。
が、
「ごめんな、分かってるんだけど。でも『帝国の光』も、そんなに資金が潤沢にある訳じゃないし。無駄遣いする訳にはいかないからな」
「…」
そうだな。
平等主義を掲げる彼らが、贅沢にフレンチフルコースなんて食べてたら、ダブスタも良いところ。
「…それにさ」
「?」
「恥ずかしい話かもしれないけど、俺、昔からファミレスのハンバーグが大好きだったんだよ」
小さい頃から、部活帰りの高校生だった訳か。
「好きだったと言うか…憧れてた、の方が正しいかな」
「憧れてた…?」
「はは、おかしいだろ?ファミレスのハンバーグが憧れって。でも、俺が生まれたのは地方の貧しい都市で、家も貧乏だったんだ」
唐突に、総統の昔語りが始まった。
ここは黙って聞くべきだな。
何なら録音しておこうと、俺はこっそり自作して、ポケットに仕込ませてきた、
『これであなたも名探偵★いつでも何処でも盗聴器』のスイッチを押した。
え?何でそんなもの持ち歩いてるのかって?
スパイのたしなみだろ。
バッテリーの持ちが12時間しかないので、必要なときしか使えないのが欠点だな。
改良の余地ありだ。
それはともかく。
「うちは自営業…って言えば聞こえは良いけど、便利屋みたいなことをして日銭を稼いでたんだ。家はボロいバラックみたいなところで、車なんて当然持ってなくて、ガラクタ同然の自転車だけが、唯一の移動手段だったな」
「…そうなのか。大変だったな」
「そう、大変だった。だから、たま〜に、年に一回か二回くらいだな。何かの記念日に、ファミレスに連れてってもらって、そこでハンバーグ食べさせてもらうのが、凄い楽しみだった。今みたいに、ドリンクバーまで頼む余裕はなかったけど」
セットについてるドリンクバーなんて、ほんの数百円なんだけどな。
世の中には、そのほんの数百円さえ、惜しまなければならない人々がいるのだ。
幸いなことに、俺はそういう生活とは無縁だったが。
でも、そういう人がいるということは知っている。
「だけど、それも十歳になるまでのことだった」
「…?どういう意味だ?」
「母親が死んだんだ」
…さっきまでも、かなりヘビーな話だったが。
「死」というワードが出てきて、更に話が重くなってきた。