The previous night of the world revolution~T.D.~
我ながら嘘ばっかりで、心苦しいが。

まぁ、本当のことを話しても、それなりには悲愴感が漂うから。

せめてリアリティのある、貧乏フリーター説の方を採用させてもらった。

そして。

「そうなのか…。…大変だったんだな、ルニキス…」

ヒイラ総統は、疑う様子もなく信じていた。

何にせよ、騙せれば良いのだ。騙せれば。

出来るだけ、同情を買うようにな。

「ヒイラ総統ほどじゃないよ。俺はただ、貧乏で惨めだったってだけの話で」

「でも、夢を断たれたんだろう?」

「夢…か、そうだな。夢…だったんだけどなぁ」

俺は、わざとらしく肘を付き、顔を伏せた。

「もしあのとき…貴族の気まぐれがなければ…。俺は大学で勉強して…学生生活を楽しんで…。卒業した後は、それなりの資格も取って…。今頃、俺は大卒の正社員として、キャリアを重ねてたんだろうな…」

「…」

それがまさか、『青薔薇連合会』というマフィアで、キャリアを重ねているとは。

人生って、分からないものだな。

「そう思うと悔しくて、悔しくて…。俺はずっと努力してきたのに…。俺のそんな努力なんて、貴族の権力の前には、全くの無力だったんだ…」

敢えて、俺は顔を上げずに言った。

それっぽく見えるだろう?

で、そこから『帝国の光』に入党した動機に繋がる。

「そんな現実が嫌で…。俺は幼い頃、図書館で読んだ、コミュニズムについての本を思い出した。もうタイトルも忘れたけど…。ルティス帝国がもし、あの本に書かれているような国だったら…。俺は平民だとか貴族だとか関係なく、実力で勉学を続けられたんだろうって…」

「…そうだな。ルティス帝国に貴族制度なんてものがなければ…。…同志ルニキスも、この国の貴族制度の被害者なんだな」

「…そうなんだろうな。そして、俺から教育の機会を奪ったあの貴族は、今頃俺の存在すら知らず、毎日苦労なく生きてるのかと思うと…。こんな腐った国は、変えなければいけないとも思うよ」

「だから、『帝国の光』に?」

「あぁ」

どうだろう。

『帝国の光』に入る動機としては、充分ではないか?

ちなみに、この脚本を考えたのは、我らの尊敬するアイズ先輩だ。

これで総統を完全に騙せたのだとしたら、その功績は、全てアイズ先輩のものだな。
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