The previous night of the world revolution~T.D.~
数時間前。

俺が、スパイとして潜入している三人からもらった情報を、残らずアイズに提出すると。

アイズはそれらを一読し、そして顔を歪めた。

そして言ったのだ。

「今すぐ、帝国騎士団と話をする必要がある」と。

俺も同意見だった。

帝国騎士団に連絡を取ると、あっさりと会合の場を得られた。

「今忙しいから」とか言われたら、帝国騎士団との契約なんて、即刻ぶっちぎってやったのに。

そういうところは、ちゃっかりしてやがる。

それがまた、俺の苛立ちを誘う。

「現在『青薔薇連合会』と、盟約を結んだ立場で言わせてもらうが」

オルタンスは、あくまで淡々と言った。

しかし、すかさずアイズが。

「盟約など結んだ覚えはありません。我々は契約をしただけです」

その通りだ。

似たような意味だが、マフィアにおいては、全く違う意味を持つ。

俺達は別に、お前達の思想に賛同して、手を取り合った訳じゃない。

あくまで需要と供給が一致しただけの、取引相手でしかないのだ。

勝手に仲間だと思われたら困る。

「分かった。じゃあ、『青薔薇連合会』と契約を結んだ立場で言わせてもらうが」

「何ですか」

「我々としても、『赤き星』や…特に『帝国の光』が、ここまで危険な共産主義組織であることは、知らなかった」

…涼しい顔をして。

よくもまぁ、そんな白々しいことを。

「むしろ、知らなかったからこそ、スパイを送り込んだ。知っていたなら、もっと慎重になっていただろう」

「知らなかったから、我々を便利な駒扱いで間諜に仕立て上げたと?」

「心外だな。こちらとしても、それなりの『見返り』は用意したはずだ。一方的に駒扱いしている訳ではない」

「見返り」を用意してるんだから、多少危険だろうと、黙ってスパイやってろと?

そう言いたいのか、この男は。

「それから、そんな危険な組織に潜入し、積極的に情報収集してくれている『青薔薇連合会』の面々には、心から感謝を…」

「あなた、さっきから他人事のように…!」

あくまで淡々と、そして白々しいことを並べ立てるオルタンスに。

激高したシュノが、立ち上がりかけたところを。

「ちょっと待ってくれ。頼むから、少し落ち着いてくれ」

三番隊隊長のアドルファスが、そんなシュノを制した。

「…何よ?」

それでも、喧嘩腰の態度を崩さないシュノ。

気持ちは分かる。

「良いかオルタンス、お前は黙ってろ」

「何で?」

「お前が言うと、何でも嫌味に聞こえるからだよ。余計『青薔薇連合会』を怒らせるだけだ」

「…」

よく言ってくれた。

何故かオルタンスが、ちょっとしょんぼりしていたが。

事実なんだから、俺達の精神衛生の為にも、お前は黙っているのが正解だな。
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