The previous night of the world revolution~T.D.~
「…認めざるを得ない。我々は、事前調査が足りていなかった。事態を重視しているつもりで、実は軽視していたのだ」

オルタンスの代わりに、二番隊のルシェが。

他ならぬルレイアの姉が、そう言った。

「その上で、『青薔薇連合会』に多大な危険を強いてしまっていることは、謝罪する」

「…」

言い訳も、弁明もしない。

正直に己の過ちを認め、平身低頭謝罪する。

その潔さは、悪くない選択だ。

しかし。

「…ごめんなさいで済む問題だとお思いで?」

アイズの言う通りだ。

こちらは、命を張っているのだ。

謝られたからって、それであいつらの危険がなくなる訳じゃない。

「どう考えても、裏があると推測するのは当たり前でしょう。比較的危険が大きいとされる組織だけ、我々に潜入を任せ。唯一そちらが送り込んだ間諜は、一番安全そうな『ルティス帝国を考える会』だけ。わざとそのように誘導したのだと、考えるのは当然でしょう」

「それについては…。こちらも、謝罪するしかない。信じてもらえないかもしれないが、私達は本当に知らなかったのだ」

「えぇ、全く。本当に信じられませんね」

アイズは、皮肉で返した。

「知らなかった、知らなかった…。知らなかったから何なんです?その『知らなかった』のせいで、我々の大事な仲間が失われるようなことがあったら、どう責任を取るつもりです?」

「…」

…もし、そんなことがあったら。

最早、ルティス帝国は終わりだ。

『青薔薇連合会』と帝国騎士団、お互いの面子と名誉を懸けて、ルティス帝国を二つに割るほどの戦争が繰り広げられることだろう。

「…分かった」

ルシェは、覚悟を決めたように言った。

「何が?」

「『青薔薇連合会』が、これ以上は危険だと判断した場合…すぐさま手を引いてもらって構わない」

「…」

「その場合でも、契約は履行する。我々は『青薔薇連合会』に『いつも通りの日常』を約束しよう」

…あっそ。

途中で「お手伝い」をやめても、「お小遣い」はくれるから。

それで手打ちにしてくれってことか。

「ルシェ殿…!そんな…」

「勝手が過ぎる。『青薔薇連合会』が契約破棄するなら、こちらが契約履行する必要は…」

ルシェの独断に、七番隊や五番隊の隊長が異論を唱えようとしたが。

「ルシェの言う通りだ。現状俺達が『青薔薇連合会』の機嫌を損ねず、スパイ活動を続けてもらうには、そう言うしかない」

アドルファスは、異論を唱える隊長達を見ようともせず。

真っ直ぐに俺達を見つめながら、ルシェの意見に同意した。

…随分肝が据わっているようだな。

『青薔薇連合会』に契約を持ちかける、その意味が…この男には、分かっているらしい。

そして。

「…」

アドルファスによって、発言を禁止されたオルタンスも。

無言で、こくこく頷いていた。

喋るなって言われたら、本当に喋らないんだな、お前。
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