The previous night of the world revolution~T.D.~
…とはいえ。
 
『青薔薇連合会』としては、厄介なところだ。

「…」

アイズも、しばし無言だった。

アリューシャは、段々状況がよく分からなくなってきたのか、頭にはてなマークを浮かべているようだったが。

お前は後で、またアイズに紙芝居でも描いてもらって説明してもらえ。

帝国騎士団は、「『青薔薇連合会』の任意のタイミングで、任務から手を引いても構わない。それでも『見返り』は保証する」と言った。

難しい問題だ。

なんだ、手を引いて構わないと言ってるのだから、すぐにでも撤収すれば良いじゃないか、と思われるかもしれないが。

そんなに簡単な問題じゃないのだ。

これでもし、すぐさま俺達が手を引けば。

『青薔薇連合会』は、帝国騎士団に貸しを作ることになりかねない。

何故なら『青薔薇連合会』はまだ、手を引くに値する損失を受けていないからだ。

『赤き星』や『帝国の光』は、確かに危険そうな集団だが。

でも、まだあくまで危険「そうな」組織でしかない。

本当に危険なのか、本当に危ないのかは、まだ分からない。

俺達は確かに、危険な綱渡りをしているが。

それでも、潜入は成功している。

今のところ、ルレイア達は、(ルーシッドを除いて)潜入している組織の、信用を得ている。

危険な組織に潜入してはいるものの、その組織の中で、危険な立場に晒されている訳ではない。

手を引くには、まだ早い段階なのだ。

潜入したばかりなのだから、それも当然だが。

それなのに、まだ本当の意味で危険な訳でもないのに、この段階で手を引くとなれば。

それは『青薔薇連合会』に「弱腰」の烙印を押されるようなもの。

裏社会における『青薔薇連合会』の、マフィアとしての威光に傷がつく。

威光は命に変えられないが、それでもプライドや面子というものは、裏社会においては重要なものなのだ。

これでは、帝国騎士団から利益だけを掠め取って、こそこそ逃げ出す、こそ泥も同じ。

大体、この段階で逃げ出せば。

帝国騎士団からすれば、「『青薔薇連合会』は大したことをしてないのに、『見返り』だけ受け取って逃げていった連中」だと認識されてしまう。

『青薔薇連合会』を、舐められてしまう。

『青薔薇連合会』と帝国騎士団の立場が、逆転してしまう。

折角、ルレイア達が時間をかけて、帝国騎士団より優位に立てるよう画策してきたのに。

それを、一瞬にして崩してしまうことになるのだ。

そのことを承知の上で、ルシェもこのような提案をしてきたのだ。

「ここで手を引くなら、お前達一生舐められることになるけど、良いの?」と。

…やってくれるじゃないか。

それでも…威光は命に変えられない。

『青薔薇連合会』のことよりも、ルレイア達の身の安全を考えるなら…ここで手を引くべきだ。

しかし…。

「…分かりました」

判断するのは、俺でもシュノでも、アリューシャでもない。

俺達の代表であり、『青薔薇連合会』の時期首領である、アイズレンシアなのだ。

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