The previous night of the world revolution~T.D.~
「どうする?手を引くか?」

「いや、まだ引かない。スパイ活動を続けます」

それが。

我らがリーダーの、答えだった。

「良いのか?」

「えぇ。ただし…引くときは、すぐさま撤収します。あなた方に相談することも、承認を得ることもしません。勝手にさせてもらいます」

「分かった。それで構わない」

アイズなら、そう答えると思った。

俺だったら…きっと、仲間を失うのが怖くて、「弱腰」のレッテルを貼られても、この場で帝国騎士団と手を切っていただろう。

それは俺が、個人の目線という、矮小な思考でしか考えられないからだ。

アイズは、もっと大局を見ている。

『青薔薇連合会』という、組織全体の利益を。

当然だ。彼は『青薔薇連合会』の次期首領なのだから。

それは、アイズが非情だからではない。

彼だって、仲間をみすみす危険に晒すことに、相当な覚悟をしているはずだ。

そしてきっと、アイズの選択が正しいのだ。

ルレイアでもきっと、そう言うだろう。

ならば、それで良い。

今は、これで良い。

アイズが、ルレイア達を信じると決めたのなら。

俺もまた、信じよう。

ルーチェスのことも、ルリシヤのことも。そして何より…。

世界で一番大切な、俺の相棒のことを。
< 192 / 820 >

この作品をシェア

pagetop