The previous night of the world revolution~T.D.~
ルティス帝国にやって来た、その翌日。

俺は早速、ルティス帝国側が用意してくれた案内人と、箱庭帝国から一緒にやって来た、執事のユーレイリーを伴って。

帝都に繰り出していた。

無論、観光の為ではない。

今回の旅の目的は、一つ。

「ここが、ルティス帝国が誇る、王立ルティス帝国総合大学です」

案内人の女性が、巨大な敷地を持つ建物を手で指した。

「ここが…」

俺は、そのあまりの壮大さに、思わず感嘆してしまった。

さすが、と言うべきか。

やはり、箱庭帝国のそれとは、比べ物にならない。

「これが、ルティス帝国で一番の大学…。凄い規模だな…ユーレイリー」

「はい。在籍している学生の数は、数千人にも及ぶそうですから…」

「数千人も…」

そんな数の国民が、この学び舎に…。

ルティス帝国と箱庭帝国の人口差を考えても、やはり凄い数だ。

「中に入らせてもらっても?」

「勿論です。ご案内しますね」

「お願いします」

俺はユーレイリーと共に、ルティス帝国総合大学の敷地内に、足を踏み入れた。

今回、俺がルティス帝国を訪問したのは。

この、ルティス帝国総合大学の視察が目的だ。

と、いうのも。

我が祖国である箱庭帝国は、長きに渡って、憲兵局によって支配されてきた。

故に、憲兵局にとって都合の悪い文化、文明は全く発達していなかった。

教育機関も、その一つだ。

一応、憲兵局のエリートを育成する為の、名目上の「大学」はあったものの。

その実態は、憲兵局の支配体制強化の為、自分勝手な憲兵局の思想を植え付け、無理矢理洗脳するだけの機関であって。

決して、自発的に学びたいことを学び、己の知識を深める場所ではなかった。

それに反して。

「ルティス帝国総合大学には、様々な学部、学科があるんです」

案内人の女性は、朗らかにそう説明してくれた。

「その内容は幅広く、文学部、経済学部、法学部、栄養学部、外国学部、子ども教育学部など…その他にも様々な学部や学科があります」

「それは凄いですね」

素直に称賛する。

憲兵局が支配していた旧箱庭帝国の大学では、政治学部しかなかった。

前述した通りの、洗脳学部だ。

そして、そんな大学でも、入ることが許されているのは、一部の特権階級生まれの子女だけだった。

「この大学は、帝都の学生だけを受け入れているんですか?」

「いいえ、ルティス帝国に籍を持つルティス帝国民であれば、全員に入学試験を受ける権利があります」

俺を驚かせるのは、まさにその点だ。
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