The previous night of the world revolution~T.D.~
その後も、大学見学をさせてもらい。

俺は、こっそりと腕時計を見た。

…そろそろだ。

「では、お次は外国学部のキャンパスに…」

「あ、あのっ」

「はい?」

俺は、冷や汗をかきながら、案内人の女性に言った。

「ど、どうやら先程の…実習室の辺りで、お、落とし物をしてしまったみたいです。ちょっと、取りに戻ってきますね」

「え、落とし物ですか?」

真っ赤な嘘だが、時間を作るには、こうするしかない。

「それでしたら、私が探してきますので。ルアリス様はこちらでお待ちを…」

「い、いえとんでもない!大丈夫です、自分で取ってきます。そ、その…あまり人に見られたいものではないので」

俺がそう言うと、案内人はハッとしたような顔をした。

「そうとも知らず、申し訳ありません」

多分、箱庭帝国の国家機密的な何かが記されている、とでも思ったのだろうが。

済みません。そうじゃないんです。

「い、いえ、良いんですよ。少し、ここで待っていてもらえますか」

「畏まりました」

「じ、じゃあユーレイリー。ついてきてくれるか」

「わ、分かりました」

俺は、一礼して俺を見送る案内人に、後ろめたい気持ちを覚えながら。

ユーレイリーと共に、内心震えながら、先程の…教育学部の実習室に戻った。

というのも。

あの直後、メールが届いたからだ。

ルレイア殿から。

『11時に、またここに戻れ』と。

死神からの招待状なんて、考えるだけで恐ろしいが。

従わない方が、もっと恐ろしいことになるのは、火を見るより明らかだ。

故に、俺は心苦しいながらも、案内人の女性に嘘をつき。

先程実習授業が行われていた、教育学部の実習室に戻った。

すると、そこには。

「…遅かったですね」

ルティス帝国の生きた死神、もとい。

ルティス帝国の歩くエロスとも呼ばれたその人が、悠然と腰掛けて待っていた。

その貫禄は、まさに死神級であった。

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