The previous night of the world revolution~T.D.~
「お、お待たせしました…」

と、言いながら時計を見ると。

約束、10分前なんですが。

それでも、俺が遅刻したみたいになってる。

なんて抗弁しても、無駄だ。

この人が場にいる限り、この人がルールであり、逆らうことは許されないからだ。

「る、ルレイア殿…ですよね?」

俺は、ずっと聞きたかったことを聞いた。

そんな、白いシャツにグレーのジャケットなんて、あまりにも普通の格好をして。

いつもの青い薔薇のブローチもつけず、あの、頭がくらくらしそうな香水もつけていない。

まるでルレイア殿ではないかのような、一般人の格好をして…。

すると。

「…ほう?」

ルレイア殿の放つ毒気に、俺は背筋が凍った。

「あなたは、己の祖国を開国する手伝いをし、ついでに脱童貞させてやった、この世に二人といない恩人の顔を忘れたと?俺はあなたを、そんな恩知らずに育てた覚えは…」

「ととととんでもありません!覚えてます!あなたはルレイア殿です!紛うことなくルレイア殿です!その節では本当にお世話になりました!」

慌てて、腰を曲げて謝ったというのに。

「俺はルレイアではない!」

「はい!?」

何故か怒られた。

る、ルレイア殿…ではない?

じゃあ、あの…。

「…誰?」

「ルナニア。ルナニア・ファーシュバル。この大学では、俺はそういう名前なんですよ」

そう言われて、ようやく理解した。

ルレイア殿は、何らかの理由があって、偽名を使ってここに潜入しているのだ。

「何かその…そういう任務なんですね?」

「まぁそういうことです」

成程。

実習室で実習授業を受けていたのも、ルレイア殿らしからぬ格好も、そのせいだったのだ。

ようやく納得した。

…けど。

「…何で、教育学部なんですか?」

どうしても、それだけは聞きたかった。
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