The previous night of the world revolution~T.D.~
すると、ルレイア殿は眉を吊り上げた。

あっ、やっぱり聞かない方が良かったかも。

「何かした?じゃないですよ。お宅らが外貨稼ぎに夢中になってる影響で、こちとら『天の光教』だのその残党だので、こんな面倒臭いことに巻き込まれてるんですよ?」

て、『天の光教』…?

俺は、ルティス帝国国内で起きた、『天の光教』とそれにまつわる事件のことを、全く聞いていなかったのである。

「全く、責任取ってもらいたいですね。こんなことがなければ、俺は今頃、ルルシーと素敵なハネムーンに出掛けていたものを。良い迷惑ですよ」

「ご、ごめんなさい…」

よく分からない理由で謝らされる俺。

とは言うものの、多分ルルシー殿は、何事がなくても、ルレイア殿とハネムーンには行かないのでは?と。

思ったが、やっぱりそんなことを言ったら、祖国が深刻な危機に陥りかねないので、やめておく。

「まぁ良いでしょう。あなたは俺の、子分みたいなものですからね。俺は寛大で心の広い大人だし」

…。

「それに俺も、最近弟子を持ちましてね。後進育成という点では、あなたに共感していますよ」

「弟子…!?」

「…何ですか。その、この世の終わりみたいな顔は」

「…い、いえ…」

実際、この世の終わりだと思ったので。

あのルレイア殿に、弟子?

ルレイア殿二世が現れると言うのか?

一体どんな人物だったら、あのルレイア殿の弟子になり得るのだ。

ルレイア殿にスカウトされたんだろうか?それは凄い。

それとも、自分からルレイア殿の弟子になりたいと志願したのだろうか?

もし後者だとしたら、その人は多分頭がどうかしている。

俺は知らなかった。

そのルレイア殿の弟子が、ベルガモット王家の嫡子で。

ついでにその人は、自分からルレイア殿の弟子に志願した、頭がどうかしている人物だということを。

「そ、それでは…あの」

「はい?」

「ルレイア殿は、何らかの任務の為に、ここに潜入されているんですね?」

「そうですね」

…。

何の任務なんですか、と聞きたいのは山々だが…。

異国人の俺が、口を出すのはおこがましいか…。

…でも。

これだけは、言わせて欲しい。
< 203 / 820 >

この作品をシェア

pagetop