The previous night of the world revolution~T.D.~
すると。

「それなら、あの…出来れば、署名を…お願い出来ますか」

ルーシッド殿が、申し訳無さそうに書類を持ち出してきた。

署名?

「箱庭帝国は、ルティス帝国の共産主義化に反対すると、箱庭帝国を代表して表明してもらった証に…。後々、もっと厄介な事態になったときの為に、形だけでも…」

「あぁ…はい、良いですよ」

こんな小国の代表の署名で、何かの力になれるのなら…。

そう思って、ペンを取り出そうとしたが。

その前に、ルレイア殿が立ち上がった。

そして、俺が署名しようとした紙切れを掴み。

「え?」

思いっきり、ビリッ、と音を立てて、真っ二つに破ってしまった。

「る、ルレイア殿…!?何を…」

これには、ルーシッド殿も慌てて立ち上がったが。

ルレイア殿は気にせず、紙切れをビリビリに破いて、はらはらと紙吹雪を床に落とした。

「必要ないからですよ、こんなもの」

「こ、こんなものって…」

「だって今、約束したんですから。あの革命で共に戦い、血を流し、命を懸けた同志と」

…!

「いちいち紙で証明するまでもない。紙よりも、血よりも濃い約束をした。だからこんな紙切れは要らない。そうですよね?ルアリス」

…相変わらず、あなたは恐ろしい。

これで俺は、絶対にあなたを裏切れない。

とはいえ、ハナからあなたを裏切る気なんか、サラサラないが。

「…えぇ、全くですね、ルレイア殿」

これまでも、これからも、いつまでも。

俺は、あなたにもらった恩を忘れはしない。
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