The previous night of the world revolution~T.D.~
そして、今日もまた同じだ。

「今日は、我がルティス帝国の統治者である、ベルガモット王家について話し合うのはどうでしょうか」

メンバーの一人が、そう提案した。

「良いですね」

「分かりました」

基本的に、誰かが議論の種を発案したら、それは通るのが普通である。

そんな訳で。

「それでは、今日はベルガモット王家について話し合いましょう」

エリミア会長の号令のもと、本日の議題が決まった。

ベルガモット王家についてだって。

ルーシッドにとっては、また胃が痛そうな話題だ。

大変結構。

で、どんな胃の痛い話が聞けるのかな?

「ベルガモット王家か…。アルティシア女王になって、もうしばらくになるよな」

どうでも良さそうな口調の上級生。

女王に「陛下」をつけない辺り、既に王家への忠誠心を感じられない。

「正直…前の、ローゼリア元女王に比べたら、印象薄いよな」

「何か、国の儀式のときしか、姿見ないもんな」

言われたい放題のアルティシア女王。

ルーシッドにとっては、上司を貶されているようで腹立たしいだろうな。

あのアルティシア女王に、上司として尊敬する点があるとは思えないが。

その点、うちの上司は良いぞ。

アイズと言いアシュトーリアさんと言い、尊敬する点しかない。 

それと、若者諸君。

今の女王、アルティシアの影が薄いのは、勿論彼女の性格のせいでもあるのだが。

それ以外にも、君達の知らない事情がある。

あの妹様は、姉であるローゼリア元女王が、さんざっぱら『青薔薇連合会』に脅され、国民から批難を受けまくり。

ルティス帝国裏社会の恐ろしさというものを、嫌というほど目の前で見させられた。

アルティシア女王が大人しいのは、そんな姉の二の舞いになることを恐れているからだ。

下手に自分が動いて波風を立て、それが誰かの恨みを買うことになれば。

後々、百倍にも千倍にもなって、自分に降り掛かってくることもあるのだと。

アルティシア女王は、その目で見させられた。

そんな経緯があって、自身の姉が退位に追い込まれ、予期せずして自分が女王の地位につき。

自分はあんな恐ろしい目には遭いたくないと、慎重になるのは当然だ。

勿論、『青薔薇連合会』と対立するようなことは、決してしない。

『青薔薇連合会』に何がいるのか、『青薔薇連合会』にちょっかいを出せば、どんな目に遭うのか。

身を以て知っているからな。

俺達としても、女王が下手に出張ってきて、引っ掻き回されると、面倒の極み。

故に、アルティシア女王には、大人しくしていてもらわないと困るのだ。
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