The previous night of the world revolution~T.D.~
…ふふ。

改めて考えてみると、本当馬鹿みたいだなぁ。

俺は自分の抱えている不幸以上に、多くの他人を不幸のどん底に突き落としてきた人間だ。

マフィアなのだから。

それなのに、そんな俺が、今更ちっぽけな自分の不幸ごときを思い出して、感傷に浸るとは。

さてはお前、深刻なルルシー欠乏症だな?

ルルシーが傍にいれば、普段はこんなこと、絶対に考えないだろうに。

すると。

『…お前が今日、どんな目に遭ったのか、大体分かった』

「そうですか」

『…その上で、お前に言う。…お前の味わった苦しみは、お前だけのものだ。他の誰にも分からないし、易しいものではなかった。例え他人にとってどうでも良いことでも、お前が死ぬほど苦しんだ事実は変わらない』

…そうですか。

ルルシーは、優しいですね。

こんな俺にも。

『そして俺は、お前の悲しみに寄り添う。誰が笑おうとも、お前が望まなくても。俺だけは、お前の悲しみを少しでも…肩代わり出来るように寄り添う。俺がそうしたいからだ』

「…相変わらずですね」

『あぁ。相変わらずだ。この気持ちは、今までもこれからも変わらない』

そう。

本当に優しいですね。

『どうでも良いことなんかじゃない。お前の味わった苦しみは…俺と、お前にとって、決してどうでも良いことなんかじゃない』

事情を知らない若者達が、どれだけ俺の不幸を嘲笑っても。

俺を嘲り、俺を放置して置いていったとしても。

ルルシーだけは違っていた。

ルルシーだけは、あんなボロ雑巾みたいになった俺を、見捨てなかった。

今でも覚えている。

周りに誰もいなくなって、生きる意味も見失って。

それでも、そんな俺に手を差し伸ばしてくれた。

だから。

「ルルシーは…本当に、相変わらずですね」

『あぁ。いつだって、俺は変わらないよ』

あなただけは、いつだって。今も。
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