The previous night of the world revolution~T.D.~
「『帝国の光』をご存知ですか?」

『帝国の光』…?

「何だ、それ」

俺は知らなかったし、他の隊長達も知らないご様子。

オルタンスなんて、話を真面目に聞いているのかいないのか、変な色で塗りたくった自分の爪を眺めていた。

爪を見るな。爪を。

つーか塗るなよ。ルレイアに影響され過ぎだろ。

「それと、『天の光教』の残党と、どんな関係があるんだ?」

「『天の光教』から枝分かれした宗教組織か?」

俺とリーヴァが尋ねると、

「いえ、宗教組織…と言うよりは、『天の光教』の教義を受け継いだ政治組織です」

政治組織…。

「『天の光教』は宗教団体であると同時に、政府の方針にも…特に王制や貴族制度の廃止に、熱を上げていたでしょう?」

「だな」

今では、そんな考えは下火になってるようだが。

まだ残ってるのか。

「宗教としての教義ではなく、政治的な教義だけが伝わって、特に若者の間で広がっているそうです」

「…」

「そして結成されたのが『英国の光』です。若者を中心に、非公認の政府組織ではありますが、帝都から地方へと、徐々に党員を増やしているとか…」

「…成程ね」

厄介なことだ。

教祖のルチカ・ブランシェットは、無力化しているというのに。

『天の光教』なんて宗教も、もう存在しないのに。

その教義だけは、未だに一部の人々の心を捉えて離さない。

それも、若者を中心に…。

大概、政治運動の始まりは若者であることが多い。

現体制に不満を持った、ルティス帝国の次代を担う彼らが結束し、新たな制度への改変を望んでいる…。

歴史的に見れば、よくあることなのかもしれないが。

その渦中に巻き込まれる俺達にとっては、頭痛の種どころじゃないな。

一難去ってまた一難、って奴だ。

全く、あのルチカとかいう教祖。

本当に、厄介なことをしてくれたもんだ。

「反乱の種は、火種のうちに消しておかなければならない。今のルティス帝国に、共産主義的思想は危険だ」

頭の堅いアストラエアは、この通り。

確かに、俺も同意見だ。

政治思想は自由だが、しかし。

そのせいで国が割れるのは、看過する訳にはいかない。
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