The previous night of the world revolution~T.D.~
「あら、お姉ちゃんもご存知なんですね」

「ご夫婦の旦那さんの方は、私の同僚ですからね」

『青薔薇連合会』に突如入ってきた、通称『裏幹部』。

私も、聞いたことくらいはある。

何と言っても、私の直属の上司の弟子ですし。

何でも、幹部級の実力を持っているけれど。

彼の出自があまりに特殊過ぎるので、幹部にすることは出来ず。

やむを得ず、『裏幹部』の称号をもらったのだとか。

あまり想像したくない出自だ。

それはともかく。

「どんな方ですか?仲良くしてるんですか」

「えぇ。奥さんとは、よく午後のお茶をご一緒するんです」

「…」

「…?お姉ちゃん?」

「いえ…」

別に、思ってませんよ。

フューニャと午後のお茶を楽しめるなんて、羨ましいだなんて。

ちっとも思ってませんから。私。

「それが、お隣の旦那さんは凄いんですよ」

フューニャは、肘をついて嘆息した。

「凄い?」

それは、あのルレイアさんの弟子になるくらいだから。

まぁ、まともな神経はしてないでしょうが。

「えぇ。なんとお隣の家は、炊事もお掃除も、旦那さんが担当なんだそうです」

「ほう」

「奥さんとお喋りする度に、たくさん自慢されますよ。羨ましいくらいに。何でもお隣の旦那さん、お洒落な料理を作るのが上手だそうで」

「お洒落な料理ですか」

「この間はフレンチのフルコースを作ってもらったとか」

そんなことが出来るんですね。ルレイアさんの弟子は。

さすがは『裏幹部』と呼ばれるだけのことはある。

「それにお菓子作りも得意みたいで、よく手作りスイーツをお裾分けしてくれるんですけど、凄く美味しいんです」

「そうなんですか」

「お掃除も得意らしくて、短時間でパパっと綺麗にしてしまうみたいですよ。お隣にお邪魔したとき見ましたけど、インテリアも素敵ですし。あれも、旦那さんの趣味だそうです」

「なかなかハイスペックな旦那さんですね」

「そうなんです。うちのルヴィアさんにも、爪の垢を煎じて飲ませたいくらいです」

隣の芝生は…という奴ですね。

「全くルヴィアさんと来たら、私がいないとダメダメなんですから」

「…」

などと言いながら。

口元は緩んでいるので、本気で呆れている訳ではなさそうだ。

良かった。

…とはいえ、今時専業主婦と言えど、妻一人に全ての家事を押し付けるのは時代遅れ。

今度義弟に会ったら、少しばかりお灸を据えておく必要があるかもしれない。
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