The previous night of the world revolution~T.D.~
「同志諸君、これを見てください」

僕はその日も、狭苦しい、薄暗い、

いかにも地下組織、みたいなサークル棟の一室にいた。

『赤き星』。

それが、このサークルの名前だ。

しかし、このサークルに所属しているメンバーは、『赤き星』を単なるサークルとは思っていない。

入学時に提出した、僕の渾身の論文のお陰で。

かろうじて、『赤き星』に入ることは許されたものの。

入れたからといって、仲間として認められたとは言い難かった。

やはり、上級生ばかりではな。

しかも、温度差。

僕も上級生を装ってはいるが、どうしても、古参のメンバーとの間には、距離を感じる。

僕がそう思っているくらいなのだから、古参メンバーからしたら、余計余所者感を感じていることだろう。

何とか置いていかれないように、僕も必死に、コミュニストを演じているつもりだが…。

彼らが、僕のことをどう思っているのかは、怪しいところだった。

…で。

これを見ろ、だったな。

一体何なんだと思って、見てみると。

なんと、半世紀以上も前に書かれた、古い論文のコピーだった。

何処から探してきたんだ、こんなの。

レポートの著者を見ると、成程、ルティス帝国の有名なコミュニストの名だ。

「とても画期的な論文です。是非、同志達にも読んでもらいたいと思いまして」

論文を持ってきた同志は、自信満々にそう言った。

それはそれは、どうもご苦労様。
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