The previous night of the world revolution~T.D.~
…とりあえず。

授業代返してもらう計画は、たった今白紙になった。

…それで。

「…どっかの国の国旗ですか?」

「え!?ルーチェス君もそう思った?」

自分でもそう思ってたんですか?

「ね?良いでしょ?斬新で!躍動的!力強さを感じる!」

物は言い様って奴ですね。

僕には、ただ真っ赤な紙に、緑の雑な十字が描かれてるようにしか見えないよ。

「…ちなみに、その作品のコンセプトは?」

「芸術は大爆発だ!」

成程。言いたいことは伝わってくるが。

あなたの場合、大爆発と言うより、大混乱を招いてますね。

「どう?ルーチェス君。私、名画家になれるかな?」

迷画家にはなれると思いますよ。間違いなく。

しかも、もうこれ以上手の加えようがない感じの作品。

これから打開しようにも、手の施しようがない。

…仕方がない。

セカイさんに、もしかしたら芸術的センスがあるかも、と一縷の望みを抱いた、僕が馬鹿だったということで。

これは、今回の教訓にしよう。

代作を疑われたら、「ルクシア・セレネという学生は、抽象画には全く向いてない」という設定で押し切ろう。

そうしよう。

で、とりあえず満足げな顔をして、何ならドヤ顔のセカイさんに。

「ありがとうございます。助かりましたよ」

感謝の言葉を忘れない、夫の鑑。

「うん!どういたしまして!」

満面の笑みを浮かべるセカイお姉ちゃん。

この笑顔が見られただけで、僕は充分ですよ。

「何なら、また絵の課題が出たときは、私が代作してあげるね!」

「あ、それは大丈夫です」

セカイさんに代作してもらうのは、これっきりということで。
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