The previous night of the world revolution~T.D.~
そうして、完成した今日の夕飯。

「出来ました」

「わ〜…」

いつもなら、僕が夕飯をテーブルに並べたら、嬉しそうに飛びつくセカイさんが。

今日は、若干引き気味。

僕の料理が下手くそだから?

いや、それは多分違う。

理由は明白。

「なんか…あの…カラフルだね」

「シェルドニア料理ですからね」

今日のメニューは、ルティス料理ではない。

シェルドニア王国の、定番家庭料理を再現してみた。

どうだろう。

初めてにしては、良い出来だと思っているのだが。

「うぅ…。野菜がカラフル…。これ、着色料じゃないよね…?」

水色やオレンジ色の野菜、のサラダを見て、セカイさんが恐る恐る聞いてくる。

「着色料じゃないですよ。元々そういう色の植物なんです」

「そ、そうなんだ…」

「見た目はインパクト強いですが、味は美味しいですよ。…ほら、ドレッシングもかけて」

「黒っ!?」

僕は、自家製のシェルドニア風ドレッシングをサラダにかけた。

黒、って…。

「ドレッシングの色のことですか?」

「そうだよ!そんな黒いドレッシングある?…あ、イカスミ?イカスミドレッシング…?」

「違いますよ」

「違うの?じゃあ…あ!黒ゴマとか…」

「シェルドニアワニの眼球をすり潰して、スパイスを混ぜたものです」

「おぇぇぇぇ」

良い反応をありがとうございます。

「そっちのスープは、シェルドニアカラスの骨から出汁を取り、シェルドニアアザラシのミンチ肉と、シェルドニアタランチュラの胴体をすり潰して団子汁にしてます」

「いやぁぁぁぁぁ」

これまた、良い反応をありがとうございます。

でもこれ、シェルドニア料理の定番なので。

「で、でもこのパスタは普通だねっ。シェルドニア料理でも、パスタは普通なんだ。明太子パスタみたいだね」

と、言いながら。

セカイさんは、自称明太子パスタに手を付けた。

たっぷりとソースのかかったパスタをフォークに巻き付け、口の中にパクッ、と入れた瞬間。

ネタバラし。

「ちなみにそのソースは、シェルドニア名物ミミズペーストです」

「ぶほぁっ」

噴き出した。

あらやだ。テーブルマナーがなってないこと。

「もー!先に言ってよ!食べちゃったじゃない!」

食べちゃって良いじゃないですか。

「材料はグロいですか、味は美味しいですよ」

「分かってるよ!この間のケーキも、何だかんだ美味しかったし!第一、ルーチェス君の作るご飯は、シェルドニア料理でも何でも美味しいよ!」

それはありがとうございます。

「うぅ…。美味しい…美味しいけど、これタランチュラなんだよね…?」

スープに入っている肉団子を見て、不安そうな顔のセカイさん。

「アザラシとタランチュラのミックスですね」

「えぇ…。絶対混ざっちゃいけない組み合わせだよ…」

両者共に、普通に生きてたら、なかなか出会わない組み合わせだったでしょうね。

「でも美味しいですよ。タランチュラの歯ごたえがカリッとして…」

「あぁぁ言わないで言わないで!」

「まぁ、食べてみてくださいよ。意外と癖になりますから」

「うん…」

もぐ、とアザラシタランチュラ団子を一口。

人生初の体験。

「…どうです?」

「うー…。悔しいことに、結構美味しい…」

でしょう?

「でも、材料聞かされずに食べた方が、もっと美味しかったかな…」

って、セカイさんは言うけれど。

食べるときは美味しく頂いて、後になって「あれアザラシとタランチュラだよ」って聞かされるよりは。

食べる前に聞かされて、心構えしておいた方が良いんじゃないか?

「それに…タランチュラなんでしょ?毒とかないの…?」

「食用に品種改良して、養殖してるタランチュラなので。大丈夫ですよ」

「うー…。私、ルティス人で良かった…」

ですよね。

それは、僕も同感です。

だってルティス人に生まれなかったら、セカイさんに出会えなかったかもしれないですから。
< 300 / 820 >

この作品をシェア

pagetop