The previous night of the world revolution~T.D.~
…見慣れないぬいぐるみだ。

昨日まであったっけ?あれ…。なかったよな?

「セカイお姉ちゃん」

「何だい弟君よ」

「あれ何ですか?あのぬいぐるみ…」

「ん?あぁ…そうだそうだ。昨日、言うの忘れてた」

セカイお姉ちゃんは、そのぬいぐるみを手に取った。

「昨日いきなり宅配のお兄さんが来てね、何かな〜と思ったら、これだった」

「…ぬいぐるみ注文したんですか?」

いや、まぁセカイさんが何を注文しても構わないけども。

あんまり、可愛いとは言えないぬいぐるみだな?

「ううん、ほら、お菓子の懸賞だよ。『タヌキのマーチ』ってお菓子あるでしょ?」

「そうなんですか?」

「…そうか。ルーチェス君、王子様育ちだから、大衆のお菓子とか知らないんだ…」

済みません僕。世間知らずで。

「ほらほら、私、前にルーチェス君にもあげたじゃない。タヌキの形してて、中にチョコが入ってて」

「あぁ、一個ずつ違うタヌキのコスチュームがプリントされてるっていう、あの無駄にコストかかってそうなお菓子ですね?」

「…言い方…」

あれは画期的だなぁと思ったよ。

中には、稀に見るレアなコスチュームのタヌキもいるんだって?

あれを探す為に、コンプ勢共がレアタヌキを求めて箱買いしたりして、購買意欲を掻き立てる。

ビジネスとしては戦略的だとは思うが、小汚い商売してるなぁと思いました。

「で、あれキャンペーンしてたんだよ。お菓子についてるシールを、何枚か集めて…20枚くらいだったかな?はがきに貼って送ると、抽選でこのぬいぐるみが当たるの」

「へぇ…。それで一時、狂ったようにタヌキ食ってたんですね」

「…言い方…」

で、それが見事に当たったと。

「あれって、本当に当たる人いるんですね。そういうキャンペーンを開催していると偽って、本当は当選者なんて一人もいないんだとばかり思ってました」

「私も半信半疑だったけど、でもこうしてぬいぐるみが届いたんだから、やっぱりキャンペーンは本物だったんだよ」

済みません、疑って。

本当に当選する人、いたんですね。

「それに当たるなんて、凄いじゃないですか。狂ったようにタヌキ食った甲斐がありますね」

「だから言い方ぁ!私がタヌキばっかり食べてたみたいじゃない!」

違うんですか?
< 302 / 820 >

この作品をシェア

pagetop