The previous night of the world revolution~T.D.~
リビングに戻ってくると、困惑した様子のセカイさんが待っていた。

「もう普通に話しても良いですよ」

「え…」

「普通に話してください。もう大丈夫ですから」

「あ、あの、えっ…。と、とう、盗聴器は?」

「押し入れに封印したので。さすがにここまで距離が離れていれば、集音出来ないはずです」

「そ、そう…」

…。

セカイさんは、目をぐるぐるとさせ。

「わ、私…私のせいだよね?ごめん…。私、全然気づかなかった…」

「あなたのせいじゃありませんよ」

「でも、私が受け取ったんだもの。け、懸賞のぬいぐるみだと思って。し、しかもこんな…り、リビングなんかに置いて」

「あなたのせいじゃありません」

「わ、私が気づいてれば。私がもっと早く気づいてたら、こんな、」

「…」

僕は、無言でセカイさんを抱き寄せた。

「…あなたのせいじゃありません」

「…ルーチェス君…」

「断じてあなたのせいではない。僕のせいです。あんなものが送り付けられてきたのも、あんなものが送り付けられてきたことに気づかなかったのも、僕の責任です。あなたのせいじゃない」

せめて、昨日の時点で気づくべきだった。

僕の怠慢が招いた結果だ。断じてセカイさんの責任ではない。

「でも…。ルーチェス君…あれ…」

「大丈夫です。僕が何とかするので、あれはあのまま放置してください。絶対触らないで」

「…何なの…?あれ、一体何…?何であんなものが…」

「…」

恐怖と怯えで震える彼女に、僕は何と言ったら良いのか。

僕の気持ちが分かるだろうか。

自分の命より大事な人が、自分のせいで、恐怖と怯えに震えている姿を見る、この辛さが。

胸が張り裂けそう、なんてもんじゃない。

もう張り裂けました。

「…それも僕のせいです」

「私…何か不味いこと喋っちゃった?もしかして、ルーチェス君を危険に晒すことを…」

「逆です。僕のせいで、あなたを危険に晒すことになってしまった…」

「そんな…」

…何をやってるんだ、僕は。

ルレイア師匠の弟子として恥ずかしい。

穴があったら、三メートルの深さでも良いから入りたい。

何でもっと、注意を払わなかった。

そうだろう。僕に手出しをするのは危険だろう、怖いだろう。無理だと思うだろう。

でも、セカイさんなら?

堅気の人間で、何の特殊な訓練を受けている訳でもない彼女なら?

盗聴器くらいなら、まだ良い。

もし彼女の命を人質に取られていたら、僕はどうするつもりだったんだ?

…有り得ない話じゃないんだぞ。

「…」

僕は、無言で怒りを噛み締め。

そして、恐怖に怯えるセカイさんに、笑顔を見せた。
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