The previous night of the world revolution~T.D.~
「大丈夫ですよ、心配しなくても」

「…ルーチェス君…でも…」

「大丈夫です。大丈夫ですから、今から僕が言うことを、よく聞いてもらえますか?」

僕は、これから自分が何をするべきなのか、既に考えていた。

こうなってしまった以上、僕に出来ることは一つだ。

「出来ますか?」

「…うん…。ルーチェス君の為なら、何でもする…」

「ありがとうございます。よく聞いてくださいね」

僕もあなたと同じです。

あなたの為なら、何でもしますよ。

「まず、僕は一度『青薔薇連合会』本部に行き、上司に事の次第を説明します」

「…うん」

「同時に、例のお隣さんの…華弦さん。覚えてますか?」

「うん…?覚えてるけど…彼女がどうしたの?」

「彼女、僕の師匠の部下なので。僕が本部に行ってる間、あなたにもしものことがないよう、すぐにここに来て、あなたを守ってくれるよう頼みます」

「…」

過保護かもしれないが。

住所が知られてしまっている以上、最早彼女をこの家に一人で置いて、安全な瞬間など一秒もない。

「ここまで良いですか?大丈夫ですか」

「うん…。私は、華弦さんと一緒にいれば良いのね」

「そうです。心細いかもしれませんが…。華弦さんも相当強いので、何かあったとしても安心して任せられますよ亅

何せ、彼女はルレイア師匠の準幹部ですからね。

「それと、その間にもう一つ、して欲しいことがあります」

「何?」

「荷造りを」

「…!私、何処に行くの?」

セカイさんは、驚いて顔を上げた。

「…まだ分かりません。ただ、安全な何処か、ということは保証します。住所が知られた以上、ここにいるのは危険なんです」

「…」

「…怖いですか?」

「…怖いよ」

…そうでしょうね。

住み慣れた場所を出て、よく分からない場所に行くなんて、誰だって怖いに決まってる。

「でも、安全であることは保証しますから。ちょっと避難するだけです。一風変わった下宿先に行くようなものですよ」

「…違うよ」

「…?」

「何処かに行くのが怖いんじゃないの。そこに、ルーチェス君がいないかもしれないのが怖いの!何処に行くかなんて問題じゃない。隣にルーチェス君がいてくれさえすれば、私は何処でも怖くない。でもルーチェス君がいないのなら…」

「…」

「どんなに安全な場所でも…強い人に守られてても…怖いよ…」

…そう。

…そう、ですよね。

どんな楽園でも、そこに愛する人がいないなら…地獄の方がマシだ。

ルレイア師匠なら、そう言うでしょうね。

「ルーチェス君も…一緒に来てくれるの…?」

「…」

はい、と言えたら良かったのに。

残念ながら、確かなことは言えない。

「…善処する、としか言えません。今は」

「…」

「…ごめんなさい」

「…ううん。私の方こそごめん…。我儘言って…」

好きな人と一緒にいたいと言うことの、何か我儘なのか。

「…もしかしたら、しばらく会えないかもしれません」

「…うん」

「でも、これだけは覚えておいてください。僕は、必ずあなたを迎えに行きます」

「…!ルーチェス君…」

これだけは誓う。

例え何が起きようとも。
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