The previous night of the world revolution~T.D.~
第二部3章
――――――…わざわざルーチェスが、ルルシーとの仲介をせず、真っ直ぐ『青薔薇連合会』本部にやって来た時点で。
ただならぬ何かが起きたのだろうと、予測してはいたけれど。
そうか。そう来たか。
「えっ…。スパイをやめるってこと?」
驚いて、シュノが尋ねた。
「はい、そうです」
「どうして…。何があったの?」
「…お前の方から言い出すってことは、余程のことが起きたんだろう」
シュノに続いて、ルルシーがそう言った。
アリューシャは…ちょっと彼には早い時間だったらしく、半分寝ていた。
起こしたら可哀想だし、そっとしておこう。
それで。
「説明してもらえる?」
「はい。昨日、うちの嫁宛に…市販のお菓子の懸賞品を模した、盗聴器入りのぬいぐるみが送り付けられてきまして」
「…!」
シュノもルルシーも、息を呑んでいた。
私は、それくらいのことは予測していたから、特に驚きはしなかった。
あのルレイアの弟子が、半ば血相変えて飛び込んでくるんだから。
それなりのことは起きたんだろう。
そして、案の定だった。
「気づいたのは今朝?」
「はい。不覚なことに、昨日までは気づきませんでした。それについては申し訳ありません」
「むしろ、一晩で気づけた方が凄いと思うよ」
これが他の人間だったら、一生気づかなくてもおかしくない。
ルーチェスだからこそ、一晩で気づけたのだ。
「これが誰の仕業なのか、僕には分かりません。ですが…覚えはあります」
…そうだね。
君の場合、まず元王族だからという理由で、付け狙われる可能性は常にあるね。
でも、今回は恐らく、そちらの理由ではなく…。
「元々僕が、『赤き星』に信頼されてないのは、ルルシーさんを通してご存知だと思いますが」
「うん、知ってるよ」
ルーチェスが上手く取り入ろうとしても、元々のメンバーの結束が固過ぎて、付け入る隙がないと。
そもそも、一年生であるルーチェスを入党させたことさえ、例外中の例外だったと聞いている。
そこを上手く入り込んだだけでも、苦労したことだろう。
そして…。
「荷物が届く数日前、『赤き星』の党員から、僕の考えは『赤き星』の方針に添うものではない的なことを言われて、ついでに論文を書いてこいって言われまして」
「論文って…。確か、『赤き星』に入るときも、提出させられてたよね?」
「はい。連中、多分論文が大好きなんだと思います」
だろうね。
「で、論文を書いて渡したんですけど…。それが昨日のことです。その場では読まれず、一日待つように言われました」
つまり、今日サークルに行っていたら、そこで論文の「評価」を聞かされていた訳か。
「今論文が何処にあるのか、誰に読まれているのかは分かりません。ですが、僕は『赤き星』には全く信用されてないようです」
「…」
「そして…これは僕の憶測ですが…『赤き星』の、あの結束力と、原理主義的な共産主義思想…。恐らく、『赤き星』も…繋がってるんでしょう」
「…そうかもしれないね」
君の推測通りだろうね。
しかも、『赤き星』の場合…きっと、もっと前から、繋がっていたのだろう。
…ルリシヤが潜入している、ルティス帝国の共産主義組織、『帝国の光』と。
ただならぬ何かが起きたのだろうと、予測してはいたけれど。
そうか。そう来たか。
「えっ…。スパイをやめるってこと?」
驚いて、シュノが尋ねた。
「はい、そうです」
「どうして…。何があったの?」
「…お前の方から言い出すってことは、余程のことが起きたんだろう」
シュノに続いて、ルルシーがそう言った。
アリューシャは…ちょっと彼には早い時間だったらしく、半分寝ていた。
起こしたら可哀想だし、そっとしておこう。
それで。
「説明してもらえる?」
「はい。昨日、うちの嫁宛に…市販のお菓子の懸賞品を模した、盗聴器入りのぬいぐるみが送り付けられてきまして」
「…!」
シュノもルルシーも、息を呑んでいた。
私は、それくらいのことは予測していたから、特に驚きはしなかった。
あのルレイアの弟子が、半ば血相変えて飛び込んでくるんだから。
それなりのことは起きたんだろう。
そして、案の定だった。
「気づいたのは今朝?」
「はい。不覚なことに、昨日までは気づきませんでした。それについては申し訳ありません」
「むしろ、一晩で気づけた方が凄いと思うよ」
これが他の人間だったら、一生気づかなくてもおかしくない。
ルーチェスだからこそ、一晩で気づけたのだ。
「これが誰の仕業なのか、僕には分かりません。ですが…覚えはあります」
…そうだね。
君の場合、まず元王族だからという理由で、付け狙われる可能性は常にあるね。
でも、今回は恐らく、そちらの理由ではなく…。
「元々僕が、『赤き星』に信頼されてないのは、ルルシーさんを通してご存知だと思いますが」
「うん、知ってるよ」
ルーチェスが上手く取り入ろうとしても、元々のメンバーの結束が固過ぎて、付け入る隙がないと。
そもそも、一年生であるルーチェスを入党させたことさえ、例外中の例外だったと聞いている。
そこを上手く入り込んだだけでも、苦労したことだろう。
そして…。
「荷物が届く数日前、『赤き星』の党員から、僕の考えは『赤き星』の方針に添うものではない的なことを言われて、ついでに論文を書いてこいって言われまして」
「論文って…。確か、『赤き星』に入るときも、提出させられてたよね?」
「はい。連中、多分論文が大好きなんだと思います」
だろうね。
「で、論文を書いて渡したんですけど…。それが昨日のことです。その場では読まれず、一日待つように言われました」
つまり、今日サークルに行っていたら、そこで論文の「評価」を聞かされていた訳か。
「今論文が何処にあるのか、誰に読まれているのかは分かりません。ですが、僕は『赤き星』には全く信用されてないようです」
「…」
「そして…これは僕の憶測ですが…『赤き星』の、あの結束力と、原理主義的な共産主義思想…。恐らく、『赤き星』も…繋がってるんでしょう」
「…そうかもしれないね」
君の推測通りだろうね。
しかも、『赤き星』の場合…きっと、もっと前から、繋がっていたのだろう。
…ルリシヤが潜入している、ルティス帝国の共産主義組織、『帝国の光』と。