The previous night of the world revolution~T.D.~
「…ルルシーさんから聞きました。ルレイア師匠達が潜入している、ルティス帝国総合大学のサークル…『ルティス帝国を考える会』も、『帝国の光』と繋がってると」

「…」

『青薔薇連合会』三人のスパイ達には、ルルシーを通じて、情報の交換と共有をしている。

だから、当然ルーチェスも知っている。

ルレイア達が現在潜入している、『ルティス帝国を考える会』。

ルレイアが仕掛けた盗聴器で、見事に引っ掛かったそうだ。

エリミア会長と、その側近達が、他のメンバーが帰った後に、密かに話している様子が、録音されていた。

エリミア会長達は、『帝国の光』に声をかけられたのだと言っていた。

同じ共産主義思想を持つ組織同士、例え相手が大学のサークルでも、共に協力しようという誘いを、持ちかけられたと。

そしてエリミア会長達は、その申し出を喜んで受けるつもりでいるらしい、と。

比較的安全で、控えめな共産主義思想の持ち主だった『ルティス帝国を考える会』までもが、『帝国の光』のお声掛けをもらった。

『ルティス帝国を考える会』より遥かに強いコミュニズム思想を持つ『赤き星』に、声が掛かってないはずがない。

『赤き星』は、『帝国の光』と繋がっている。

そう考えて間違いないだろう。

そして『赤き星』は、その結束力の高さ故に…自分達と思想を異にする者を許さない。

ましてや…スパイの存在など、決して。

だからこそ、論文を書かせてルーチェスの思想を試すようなことをしたり。

果ては…盗聴器入りのぬいぐるみまで、送りつけてきた。

問題は、送り先がルーチェスではなく、ルーチェスの奥さんであるという点だ。

ルーチェス本人だったなら、どうとでも対応するだろう。

多分『赤き星』も、それは分かっている。

ルーチェス自身をいくら叩いても、埃は出てこない。

だから、ルーチェスの身辺を洗い、ルーチェスの奥さんに目をつけた。

サークル内では、鉄壁のガードを誇るルーチェスでも。

自宅での様子を調査すれば、必ずボロが出る。

そう踏んで、ルーチェスの住所を調べ、彼の奥さん宛に送りつけた…。

たかが大学のサークルごときが、ルーチェスの住所を調べ、奥さんの名前まで調べたこと自体が、既に異常だ。

普通のサークルがやることじゃない。

ましてや、盗聴器なんて。

…。

「…過ぎたことを言っても仕方ない。その盗聴器は何処に?」

「家の中に封印してます。壊してはいません」

「分かった。そのまま壊さないで。あくまで盗聴が露見したことは隠しておきたい」

盗聴器に気づいて、破壊しようものなら。

私はスパイですと、宣伝してるようなものだ。

自分には何の非もない、としらを切る方が良い。

ようは、ボロを出さなければ良いのだ。

しかし、盗聴器が届けられたのは昨日で、気づいたのは今朝。

その間に、ルーチェスとルーチェスの奥さんは、何を話したのだろう。

何処までの情報が、「敵」に漏れた?

次第によっては、三人のスパイ達を、全員引き上げさせる必要もある。
< 312 / 820 >

この作品をシェア

pagetop