The previous night of the world revolution~T.D.~
これが、シュノの覚悟だ。

彼女の決意だ。

自分も、自分でも、何とか前線で危険な思いをしている仲間達を助けようと。

助けられるように、力をつけようと。

努力を重ねていたものが、ここに来て、花開こうとしている。

しかし。

「…あなたの決意は見上げたものです。心から尊敬します、シュノさん」

ルーチェスだった。

「…」

「…それでも、あなたがローゼリア学園大学に編入学出来る可能性は、限りなく低いと思います」

…相変わらず。

容赦のない言い方をするね。

そしてシュノは、そう言われても表情を変えなかった。

そう言われることは予測済み、と言わんばかりに。

「ルティス帝国最高ランクの大学の名は、伊達ではありません。正直…半年ばかりガリ勉しただけの、付け焼き刃の学力で、ずっと英才教育を受けてきた学生と並べるとは思えない」

「…そうね」

厳しいが、確かに、それが現実だ。

付け焼き刃で入れる大学ではない。

また、裏口入学なんてものもあるが。

今回は、それも厳しい。

裏口入学なんかして、それがもし露見すれば、あっという間にスパイであることも露見しかねない。

「仮に入学出来たとしても、講義に出席しなければいけません。教授に質問されたとき、課題を出されたとき、学生同士のセッションのとき…。上手くやり過ごせますか?普通の学生のように振る舞うことが出来ますか」

ルーチェスは、容赦なく尋ねた。

厳しい言い方だが、事実なのだ。

それが出来ないならば、大学に潜入なんて無理だ。

「ついでに言うなら、周囲から信用される為には、それなりの人望と社交性が必要です。シュノさん…割と人見知りですよね?」

「うっ…」

…こればかりは、ふいっ、と顔を背けるシュノ。

…自覚はあるようだ。

「でも…それでも、私、頑張るわ。ルーチェスの代わりにはなれなくても…。役に立ってみせるわ」

「…その心意気は買いますが…。でも、やっぱり…あなたの学力では…」

「それに…私が行くつもりなのは、ルーチェスが行ってたローゼリア学園大学じゃないの」

「え?」

ローゼリア学園大学じゃない。

それはつまり…。

「さすがに私も、ルレイアやルーチェスみたいに頭が良い訳じゃない…って、分かってる。でも、女子学園の方なら…。同じ敷地内にあるでしょう?ローゼリア女子学園大学。そっちに行くつもりなの」

そうだね、あったね。

あそこは、女子大学も併設していた。

「成程…。同じローゼリア学園大学でも、女子大の方は、若干偏差値が低いと聞いたことがありますね」

「そうなのか?同じ系列の大学なのに?」

と、首を傾げるルルシー。

私達庶民生まれにしてみたら、ローゼリア学園大学、と聞いただけで頭が良い人達だ、と認識してしまうけれど。

「意外とそんなもんですよ。大体、同じ大学の中でも、学部によってかなり偏差値に差はありますし。例えば大学の中でも、医学部があったら、そこだけ偏差値は跳ね上がりますよね」

「あ、そういうことか…」

ちなみにルーチェスの通ってた、美術学部。

あそこは、かなり偏差値の高い部類に入る。

「女子学園大学の中に、社会福祉学部っていうのがあって、そこが比較的、偏差値が低いの。だから、そこを狙うつもり」

「成程、ジジババを世話する学部ですね」

介護士を目指す学部、って言おうか。ルーチェス。

君、口の悪さが師匠に似てきてるよ。

弟子としては、良い兆候なのかもしれない。
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