The previous night of the world revolution~T.D.~
危険は承知の上だ。

私も、シュノも。

厳しい判断をするが、私自身、ルーチェスでさえ入り込めなかった場所に、シュノが近づけるとは思えない。

シュノの実力不足ではない。適材適所というものがあるのだ。

それでも。

彼女に、それだけの覚悟があるなら。

「…分かりました。済みません、シュノさん…後のこと、宜しくお願いします」

ルーチェスも、観念したようにそう言った。

「うん、任せて」

「くれぐれも気をつけろよ。ルレイアじゃないんだから…突っ走って暴走するな。慎重にな」

「うん」

この場にルレイアがいたら、猛反発不可避。

「シュー公…。アリューシャ、なんも出来ねぇけど…。でもあの、ほら、狙撃して欲しい奴がいたら言ってくれ!地平線の彼方からでも撃ち抜いてやるから!」

「うん、ありがとう」

多分、狙撃の必要はないと思うけど。その心意気は買う。

「じゃあ、シュノさん。僕が今把握してることは、全部シュノさんに引き継ぎさせてください。とは言っても…女子大の方とは、事情が違うかもしれませんが」

「大丈夫、分かることは全部教えて」

「はい」

…。

…トントン拍子に、話が進んでるようだけど。

「…それにしても、シュノ」

「なぁに?」

「アシュトーリアさんは、どう説得するつもり?」

「うっ…」

あぁ、そこは考えてなかったんだ。

シュノを、実の娘のように可愛がっているアシュトーリアさんのこと。

シュノがスパイとして潜入しますなんて聞いたら、きっと止めるだろう。

「そ、それは…何とか頑張って…納得してもらえるように…」

「冗談だよ。アシュトーリアさんには、私から頼んでおく」

私は、苦笑いしながらそう言った。

交渉相手としては、非常に難しい相手だが。

最後には、きっと納得させてみせるよ。

「ありがとう…アイズ」

「良いんだよ。頑張って、シュノ。無理しないようにね」

「うん」

引くことを決意したルーチェスの覚悟も。

このときの為にと、ずっと努力し続けたシュノの覚悟も。

全部背負って、私達は前に進むのだ。
< 318 / 820 >

この作品をシェア

pagetop