The previous night of the world revolution~T.D.~
観光事業が軌道に乗ってきた、我が箱庭帝国では。

今度は、国内の教育機関を充実させようと、新しい大学の設立を企画している。

先日、隣国のルティス帝国総合大学に視察に行ったのも、そのプロジェクトの一環だ。

そして、今。

二年後を目処に、新しい国立大学の本格始動を目指して、各学部のカリキュラムや。

それに伴って、各講義の教員を募ったりと、やることが山積みだ。

ちなみに。

このプロジェクトに関しては、俺と、それからラシュナが主に担当している。

「それで…ラシュナ」

「はい」

「俺が提案した、例のプロジェクトについてだけど…」

俺がその話を持ちかけると、ラシュナは若干顔を曇らせた。

「…どうしても無理そうか?」

「いえ…。努力しているところです。何とか、予算内にそのプロジェクトも実現しようと…」

「そうか…。厳しいとは思うけど、でも何とか…」

実現に移したいとおもっ、

「いやぁ、無理だと思いますよ?この限られた予算の中で、同時に通信制大学も設立しようなんて」

やっぱりそ…。

…え?

「!?」

俺達は、突如聞こえたその声に、驚いて振り向いた。

そこには、さっきまではいなかった人物が、いた。

まるで、異空間からワープでもしてきたかのように。

背中に、身長ほどの大きさの両剣を携え。

会議室のテーブルに腰掛けて。

俺達が見ていた、新しい大学の講義一覧の書類を、パラパラと捲りながら。

涼しい顔で、そう言った。

「ふーん、成程…。悪くはないですが、無駄が多いですね。例えば、この『シェルドニア語学』の講義」

「貴様っ…何者だ!」

ユーレイリーとヴィニアスが、両側から彼に向かって拳銃を向けるも。

その人は、まるで気にしていない風に、講義一覧を捲っていた。

「この科目を、必修にする必要はありません。ましてやこの学部…。文化学部なんでしょう?確かにシェルドニア文化を学ぶには、シェルドニア語を知っていた方が良いのは確かですが…」

俺もまた、帯刀していた剣に手を伸ばした。

…一体何者なのだ。

厳重な警備を敷いているこの建物に、どうやって入り込んだ?

いつの間に…。

大体、この人は一体…。

「あなた、一体何者…」

俺が尋ねる前に、ヴィニアスが拳銃のセーフティを外した。

「ヴィニアス!?」

「何者であれ、侵入者は侵入者。何者かなんて、拘束して聞き出せば良い」

そ、それはそうだが。

ちょっとまっ、

俺が止める前に、ヴィニアスは拳銃を発砲した。

殺すつもりはない。あくまで、捕らえるのが目的。

侵入者の足に向けて、拳銃を発砲したが。

侵入者は、ヴィニアスを一瞥もせずに、目にも留まらぬ速度でくるりと両剣を回し。

ガキンッ!と鋭い音を立てて、ヴィニアスの弾丸を弾いた。

「なっ…!」

ど、どんな動体視力して…!
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