The previous night of the world revolution~T.D.~
「えー、こほん。改めまして」

…。

「僕の名は、ルーチェス・アンブローシア。『青薔薇連合会』の『裏幹部』にして、ルレイア・ティシェリーの弟子です」

…。

「本日から、箱庭帝国に亡命させてもらうと同時に、『青薔薇委員会』のお手伝いをするよう、師匠から仰せつかってきました。宜しくお願いします」

…。

…えーと。

…大丈夫。俺も、ツッコミどころが多過ぎて、全然状況が分かってないから。

とりあえず。

…敵ではない、ということは確かだ。

その胸に輝く、見慣れた青い薔薇のブローチを見れば分かる。

彼は、『青薔薇連合会』の人間だ。

それも…。

「…聞いてます?」

「あ、はい…」

「何ですか。そんな不審げな顔しないでくださいよ。怪しい者ではありませんよ?」

充分怪しい者だと思います。

とは、言えなかった。

だって。

「…あの」

「何ですか」

「あなたが…その…」

「僕、ルーチェスですけど」

「じゃあ、ルーチェス殿が…えぇと」

「何です」

「…ルレイア殿の、弟子…なんですか?」

「はい」

そうなんだ。

やっぱり?

本人がそう申告してるから、そうなんだろうと思っていたが。

更に。

「…」

優雅にテーブルに腰掛けている、ルーチェス殿の頭の天辺から足先までを、ゆっくり見下ろす。

胸に輝く、青い薔薇のブローチ。

全身、黒を基調とした衣装を身に着け。

一振りで、軽く10人くらいは薙ぎ倒せそうな、ゴツい両剣を持ち。

全身から漂う、何処か師匠のそれに似た、妖しい気配を感じるフェロモンを放っている。

そして、『青薔薇委員会』の警備を、難なくすり抜け。

俺達に気づかれず、部屋の中に侵入し、当たり前のようにそこに座っている。

この人外生物感…。

成程、ルレイア殿の弟子だと言われれば、納得だ。

確実にあなたは、ルレイア殿と近いところにいる。

それが名誉なことなのか否かは、置いておくとして…。

「…それで、その、ルーチェス殿」

「はい」

あなたが、ルレイア殿の弟子だということは理解したが。

「今日は…一体何の用件で、ここに…?」

『青薔薇連合会』から使者が来るなんて、聞いてないですよ。

まさに、青天の霹靂。

あなた、何でここにいるんですか?状態。

「用件はさっき言いましたよ。亡命させてもらいに来ました」

「…」

「ついでに、『青薔薇委員会』の、脱童貞したものの、経験人数一人wで夜の営みが下手くそな、不甲斐ない元童貞お坊ちゃまのお手伝いをしに来ました」

「…」

折角来てもらって、アレなんですけど。

今すぐ、帰ってもらって良いですか?
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