The previous night of the world revolution~T.D.~
「実を言うと僕、今自分の国にいるのが危険な状態にありましてね」

「え、何で…」

「まぁこれを読んでくださいよ。話はそれからです」

と言って。

ルーチェス殿は、黒い封筒を差し出してきた。

封筒には、青い薔薇の印が捺されている。

こ、これって。

急いで封を開けると、そこに入っていたのは、『青薔薇連合会』からの密書だった。

そして、『青薔薇連合会』からの「お願い事」だった。

まず前提として、現在『青薔薇連合会』が、国内に蔓延る反乱分子監視の為。

帝国騎士団と連携して、各機関に潜入調査中であることは、俺も知っている。

視察に行ったルティス帝国総合大学で、ルレイア殿と鉢合わせしたからな。

その上で、手紙に記されていたのは。

このルーチェス殿は、私立ローゼリア学園大学の共産主義サークルに潜入していたこと。

そのサークルが予想以上に危険で、彼の身内にまで目をつけ始めていること。

それにより、これ以上の潜入は不可能と判断。

また、一度疑われてしまった以上、国内に留まるのは危険なので。

『青薔薇連合会』と「友好関係にある」箱庭帝国の代表、ルアリス・ドール・エーレンフェルトに…つまり俺のもとに…亡命させて欲しい、とのこと。

具体的にどれくらいの期間になるのかは不明だが、事が沈静化し、危険がなくなるまで。

ルーチェス殿とその家族を、箱庭帝国で守って欲しい。

そういったことが、丁寧な言葉で書き連ねてあった。

筆跡からして、ルレイア殿ではないと思っていたが。

末尾に、アイズレンシア殿の署名があった。

アイズ殿と言えば、『青薔薇連合会』の次期首領と名高い幹部だ。

実質、『青薔薇連合会』のNo.2に、直々に依頼されたようなもの。

あまりに畏れ多くて、手紙を落っことしそうになった。

落っことしはしなかったけど。

「…どうです?事情、分かりました?」

「…ルーチェス殿…」

手紙を読み終えたと見て、ルーチェス殿が声をかけてきた。
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