The previous night of the world revolution~T.D.~
俺が、そう言うと。

ルーチェス殿は、深々と溜め息をついた。

「成程、ルレイア師匠が僕に、『色々教えてやれ』と言う訳ですよ。あなたと来たら、一国を担うという自覚が出来てないと見える」

グサッ。

「そ、そうですか…?」

「仕方ない。ここは、ルレイア師匠の一番弟子で、元ベルガモット王家の嫡子だった僕が、あなたに一国の長たる者の資質というものを、指南してあげるとしましょう」

…。

…は?

「それが、亡命させてくれるお礼ってことで。ルティス帝国と箱庭帝国じゃ、国力も情勢も違いますが…まぁ、国家という根幹は同じですし。何とかなるでしょう」

え、ちょ。

…は?

あなた今、サラッととんでもないことを言わなかったか?

「これでも、生まれたときから帝王学は叩き込まれてる身なので、まぁあなたの家庭教師になるくらいは、不足ないでしょう亅

て、帝王学って。

しかも、生まれたときから。

る、ルレイア殿の弟子だということは聞いていたが。

ま、まさか。

「…あの」

「何ですか。僕が家庭教師は嫌ですか?」

い、いや、そういう訳ではなく。

何だかさっき、聞き捨てならない言葉を聞いたような気がしたものだから。

「べ、ベルガモット王家の嫡子だった…と、仰っていたような気がしたんですが」

「はい」

「ほ、本当なんですか?」

ルレイア殿の…いつもの、笑えないジョーク、とかではなく?

「え?事実ですけど…」

「…」

「ちょっと前まで皇太子だったんですが、王様になるなんて面倒じゃないですか。それに何より、王様になんかなったら、憧れのルレイア師匠の弟子になれなかったですし!」

「…」

「自分から王位継承権放り投げて、ルレイア師匠の弟子として、マフィアに入ってみました。…何かおかしいですか?」

…何かおかしいですか、じゃない。

全部おかしいよ。

あまりの衝撃の事実に、卒倒しなかった自分を褒めたいくらいだ。
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