The previous night of the world revolution~T.D.~
「…どう思う、とは?」

「『赤き星』は、このルクシアという学生が俺達の同志に相応しいかどうか、判断を求めてきてる。お前はどう思う?ルクシアは、俺達の同志に相応しいと思うか?」

「…」

そんな議論は、どうでも良い。

それより、何故。

何故その判断を、俺に求める?

「どうして、俺に聞く?」

「別に他意なんてないよ。ただ、ここは議論の場だから。新人のルニキスにも、同志として、意見を聞かせて欲しいだけだ」

じゃあ、他意ありまくりじゃないか。

良いだろう。

「そもそも、論文を通して、このルクシアという学生が本当に『赤き星』に相応しいのか、意見を求めてくること自体が間違ってると思う」

俺は、淡々とそう答えた。

ルーチェスの手書きの論文を、貶す気は毛頭ない。

ルーチェスとて、望んでこんなもの書いた訳ではないのだろうし。

「間違ってる?…何故?」

「この論文を読むに、彼は間違いなく、俺達と志を同じくする同志だ。『赤き星』が、何故彼を疑ったのか理解出来ない。程度の差こそあれど、俺達が目指すところは同じだろう?」

「そうだな」

「ならば、仲間を疑う理由にはならない。皆が一致団結しなければならないときに、内輪揉めを起こすべきじゃない」

このときの俺は。『赤き星』が、『帝国の光』と繋がっている、という情報を知らされたが。

『赤き星』が暴走し、ルーチェスの嫁に手を出そうとしていたことまでは、知らなかった。

つまり、ルーチェスが退くか、そのまま留まるか、分からなかった。

だからあくまで俺は、ルーチェスを擁護するように話を誘導した。

すると。

「本当だよ、同志ルニキス。皆もそう思うだろう?」

ヒイラは、皆に訴えかけるように言った。

「同志ルニキスの言う通りだ。確かにこのルクシアという学生は、かなり原理主義的な思想を持っているようだけど、それは『赤き星』全体の方針が原理主義的であるからだ」

…。

「そして同志ルクシアは、俺達と同じ志を持っている。『赤き星』は、ちょっと厳格過ぎるからな。彼に厳しい評価を下してるみたいだけど…。俺は、同志ルクシアが危険分子だとは思わない」

…何?

今、何か不穏なワードを耳にしたぞ。

危険分子…だと?
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