The previous night of the world revolution~T.D.~
「よし。『赤き星』には、『同志ルクシアは立派な仲間だ』と報告しよう。彼は危険分子ではないと」

「ちょっと待ってくれ」

「…どうした?同志ルニキス」

聞き逃す訳にはいかないぞ。

何だ、その言葉は。

「危険分子とは、どういうことだ?誰のことを言ってる?」

俺がそう尋ねると、ヒイラ総統は、一瞬怪訝そうな顔をして。

そして、明るい笑顔で答えた。

「あぁ、まだ説明してなかったかな。危険分子、そのままの意味だよ。俺達の思想に反対し、俺達の邪魔をしようとする裏切り者のことを、俺達は危険分子って呼んでる」

そんな…前時代的な。

「『裏党』に入るとき、同志に拷問の様子を見せたろう?あれらも、『帝国の光』を裏切ろうとした危険分子なんだ」

…成程。

つまり俺も、正体がバレた暁には。

見事に、お前達に危険分子のレッテルを貼られる訳だな?

「腐ったリンゴは樽を腐らせる。危険分子は、徹底的に組織から追い出さなければならない。『帝国の光』の、鉄の掟なんだよ」

笑顔で言うことではない。

そうか、そういうことか。

俺はどうやら、とんでもない危険な組織に潜入させられているようだな。

何なら、『青薔薇連合会』に単騎で乗り込んだとき以上に。

…いや、やっぱりあのときよりはマシだな。

「分かってくれたか?」

「あぁ。確かに、その通りだな」

お前達は、決定的な勘違いをしている。

腐ったリンゴは、確かに樽を腐らせる。

それは、俺も同感だ。

しかし。

お前達の場合、そもそもリンゴを入れる樽そのものが、既に腐ってるんだよ。
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