The previous night of the world revolution~T.D.~
「皆!動揺するのは分かる。でも、落ち着こうじゃないか。たかが学生の一人二人、所詮は愛国精神の足りない、非国民だったってだけの話じゃないか」

非国民呼ばわりとは。

確かに俺達マフィアは、非合法なことばっかりやってるから、非国民と罵られても仕方ないが。

その理論で言うなら、俺も立派な非国民だな。

「確かに、『赤き星』に危険分子の種が潜り込んでいたかもしれない…その不安は分かる。それは憂慮すべき点だ。だけど、中枢にいる俺達が狼狽えていたんじゃ、他への示しがつかない」

ヒイラ総統は、笑顔まで作って皆にそう言った。

動揺する党員達を、落ち着かせる為に。

「大丈夫。危険分子は一人ずつ、確実に潰していけば良い。そしていつか、全ての国民が愛国心を持った、平等な国を作っていくんだ。皆、その精神を忘れないようにしよう!」

と、言って。

「さぁ、皆心を一つに。革命の訓示を暗誦しよう」

総統がそう呼びかけると、党員達はサッと立ち上がり、声高らかに、革命訓示なるものを暗誦し始めた。

勿論、俺もそれに続く。

この結束力、そして団結力。

さすがは、ルティス帝国の共産主義団体の中枢と言ったところか。

それに何より厄介なのは。

この熱狂的な共産主義者達をまとめている、ヒイラ・ディートハットという存在だ。

彼が、俺のことをどう思っているのかは知らないが。

俺は、全く彼のことを信用してはいなかった。
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