The previous night of the world revolution~T.D.~
部屋の中もそうだが。

部屋の外からも、監視されているようなものだ。

何せ、アパートの住人全員に、「大歓迎」されてしまったからな。

わざわざ両隣に挟まれるような部屋の位置。

右隣からも、左隣からも、耳をそばだてて挙動を監視されていると思って良い。

ついでに言えば、ここは二階だから、上からも下からも見張られている。

俺が深夜に出掛けようものなら、住人達が窓の隙間から、じろじろと覗いていることだろう。

何なら、尾行されててもおかしくなさそうだな。

これで、よく分かった。

ヒイラ・ディートハットは、全く以て俺を信用してはいない。

まぁ、ヒイラ総統が俺を信頼していたとしても、他の『裏党』党員が俺を信頼するかどうかは、また別の話だからな。

ある意味でこの監視生活は、『裏党』党員になる為の、通過儀礼なのかもしれない。

こんな通過儀礼は御免だな。

ともあれ。

俺がやることは、二つ。

まず、「自分が監視されている」ことを悟られないよう生活することだ。

俺はあくまで、『帝国の光』に忠実な、ちょっとばかり頭が良いだけの、しがないフリーターでなければならない。

まずは、『帝国の光』から信頼を受けなければならない。

そして、俺がやるべきことのもう一つは。

『帝国の光』の信頼を得た上で、『帝国の光』から情報を引き出すことだ。

つまり、スパイの本業って奴だな。

俺の手に掛かれば、盗聴盗撮変装偽造、何でもお手の物なのだが。

問題は、部屋の中を常時見張られていることだ。

俺はわざと、詰替え用のシャンプーとボディーソープのストックを持って、薄汚れた、手狭なバスルームにも入ってみる。

「えぇと…片付けるところは…」

収納スペースを探す振りをして、バスルームも見渡してみるが。

あるある。カメラポイントが無数に。

バスルーム盗撮とか、色んな意味で犯罪だろう。

バスルームも、詳しく確認する訳にはいかないが。

この部屋の中で、俺がプライバシーを守ることが出来る場所は、どうやら布団の中だけらしい。

最早刑務所だな。

まぁ、刑務所みたいに、手と顔は外に出して寝ろ!と強制されている訳ではないので。

一応、刑務所よりは自由があるが。

閉じ込められてもいないしな。

だが、バスルームでさえ、俺がプライバシーを確保することは出来ないのが分かった。

やっぱり、布団の中だけだな。監視されてないのは。

とはいえ、監視する側も、それは承知の上だろうから。

俺が電気を消し、ベッドに潜り込んだ後の一挙一動は、ずっと見張られていると思った方が良いな。

もし俺が、わざとらしく毛布を頭がまで被って、何やらゴソゴソしているのを見られたら。

「あいつ何か怪しいことやってんな」と、警戒度が急上昇すること間違い無し。

全く、俺だってお年頃の男の子なんだからな。それくらいの自由は見逃してくれよ。

わざとらしく、丸めたティッシュペーパーをゴミ箱に捨てておいてやろうか。

…と、いうのはまぁ、冗談として。
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