The previous night of the world revolution~T.D.~
盗聴や盗撮は、俺もするつもりだった。

折を見ながら、あの『帝国の光』所有のビル全体に、特に『裏党』だけが入ることを許される、故障中エレベーターエリア。

あそこを中心に、色々細工をしようと思っていた。

しかし。

自宅をここまでガチガチに監視されていては、そう簡単にはいかない。

今日、初めて『裏党』に招かれてから、既にあの会議室と故障中エレベーターの数箇所に、盗聴器は仕込ませてもらった。

え?いつの間にそんなことを!?と思ったろう?

シェルドニアの王宮を、二度脱出した俺を舐めてもらっては困るな。

だが、問題は、その仕込んだ盗聴器に録音された音声を、いつ聞けば良いのか、という点だ。

部屋中監視されてるんだからな。

そこで、俺は策を講じることにした。

別に何のことはない。

俺は荷ほどきを終えて、古ぼけたマットレスに座った。

そこに、俺はスマートフォンを取り出して、ワイヤレスイヤホンを装着し、画面をタップ。

スマートフォンを枕元に置き、そのままマットレスに身体を横たえた。

そう。

俺、あれだから。

寝るとき、音楽聴きながらじゃないと寝られないタイプ。

たまにいるだろう?

いや、本当は別に、音楽なんて聴かなくても寝られるけどさ。

今だけは、音楽聴きながらじゃないと寝られないタイプを演じることにする。

…言っておくが。

俺が聴いているのは、勿論音楽などではない。

昼間に仕掛けた盗聴器の音声を、スマートフォンを通して再生している。

だが、傍から見れば、ただ曲を聴きながら寝てる人にしか見えないだろう。

その実、盗聴器を再生しているのだから、笑えないよな。

とはいえ、これで盗聴器の再生はいつでも出来る。

問題は、監視カメラの映像が見られないことだ。
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