The previous night of the world revolution~T.D.~
…まぁ。

刑務所みたいなアパートを充てがわれた時点で、分かっていたことだがな。

本当に信頼しているのなら、あんなアパートを斡旋するはずがない。

とはいえ、これだけはっきり言われるとな。

こちらとしても、ヒイラへの信頼が失せる。

元々信頼なんかしてないけどな。

『彼は…今のところ、特に怪しむ要素はなさそうですが』

おっ。

良い報告だぞ。

よく見たら、画面に映ってるの、例の受付お姉さんじゃないか。

あの人が、俺の監視員責任者なのか。

『アパートの中でも、特に不審な動きはしていないようです』

当たり前だ。気をつけてるからな。

『外出時は?怪しい場所に出入りしてないか』

『特には。バイト先のホストクラブと、近所のスーパーやコンビニに行く程度です』

当たり前だ。気をつけてるからな。

全く、俺にプライバシーというものはないのか。

『ふーん…まぁ、そんなもんか…』

おい。もう少し良い反応をしろ。

俺も頑張ってるんだぞ。

『とにかく、監視は怠るな。あれでも、結構なインテリらしいからな。何考えてるか分からない』

『畏まりました』

何考えてるか分からないって。

それはお互い様というものだ。

「…あなたも、全く信用されていないようですね」

「酷い話だな。俺の何処がそんなに信用ならないんだ?」

「その仮面のせいでは?」

何かが聞こえたような気がするが、まぁきっと気のせいだ。

「ともあれ、俺も全く信頼されてないということだな。精々、奴らに信頼されるよう、徳を積むことにしよう」

「そうですね。頑張ってください」

そんな訳で。

仮面の漆黒ホストは、しばらく続けなければならなさそうだ。
< 355 / 820 >

この作品をシェア

pagetop