The previous night of the world revolution~T.D.~
な…。

…何だ?あれ。

俺が呆然としている間に、フューニャは何事もなかったかのように、いつもの「浮気チェック」を始めた。

「浮気チェック」というのは、フューニャの警察犬顔負けの嗅覚で、俺におかしな女(男の場合もある)がくっついていないか、チェックするのである。

そんなことしなくても、俺はフューニャ以外の女性は、恋愛対象にはならないんだが。

男性は勿論、アウトオブ眼中である。

ルレイアさんとルルシーさんじゃないんだから。

…それはともかく。

「…ふむ、今日もシロですね」

「浮気チェック」は、当然クリア。

ぽふっと抱きついてきて、俺の胸に頭をぐりぐりとさせて、その姿は、もう何処に出しても恥ずかしくないくらい可愛い、

いや、この姿を俺以外の人間に見せるのはムカつくので、やっぱり俺だけで独占したい。

しかし、フューニャ。ぐりぐりするのは良いが。

片手に持ってる、その骨は何?

え、と…豚骨…とか?

手羽元にしては…えらく長いような…。

聞きたいのだが、同時に物凄く聞くのが怖い。

「あ、あの…フューニャ?」

「はい、何ですか?」

「え、えぇと…」

頑張れ。聞くんだ俺。

「その骨何?」って。簡単なことだろう。

もしかしたら、ほら…。また、華弦お義姉さんが、シェルドニアから取り寄せてくれた、謎食材なのかもしれないじゃないか。

そう思えば希望が持てる。

しかし。

「?…何です?」

「え、あ、いや…その…」

「何ですか。言いたいことがあるなら言ってください」

その骨何?

…って、聞ければ良かったんだけどなぁ。

「…今日、晩ご飯何?」

聞けなかった、度胸のない俺を許してください。

「今日は野菜炒めです」

およそ、骨とは関係なさそうなメニューだった。

嘘だろ…?せめて「カレーです」とか言ってくれれば、あぁ出汁を取るのに使ったのかな、と希望が持てるのに。

いや、カレーを作るのに骨で出汁を取る、という発想も、俺にとっては「?」だが。

野菜炒めに、骨を使う要素、ある?

…分からない。

フューニャは箱庭帝国生まれだから、もしかしたら箱庭帝国には、骨入り野菜炒めなるメニューも、存在するのかもしれない。

きっとそうだ。

何だかガリガリ歯に当たって不味そうだが、今までフューニャが作ってくれた料理で、不味かったメニューは一つもないし。

「亭主たる者、妻が真心込めて作ったものは、残さず平らげるのが男の器量というものです」って、前華弦お義姉さんが言ってたからな。

俺は食べるぞ。例え骨入り野菜炒めでも。

…でも、それって…何の骨?

そこだけは確認させて欲しいなー…と思いながら、戦々恐々とリビングに向かう。

すると。

「…うぉっ!?」

そこに置いてあったものに、俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
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