The previous night of the world revolution~T.D.~
「へ〜ぇ、ルナは王都から来たんだ」

「じゃ、実家暮らし?」

「ううん、寮に入ってるの」

「え、凄い。よく空きが出たね。ここ、学生寮小さいから、抽選でしか入れなかったのに」

「私も、入学する前応募したけど、落ちちゃって、アパート借りてるんだよねー」

「たまたまだよ。偶然、前期で卒業しちゃった先輩の部屋が空いたからって、そこに入れてもらえたの」

「へぇ〜。良いなぁ」

最初の授業が始まる、五分前には。

私は、すっかりその四人組と打ち解けていた。

…と言うか、打ち解けているつもりだ。

何度も言って申し訳ないが、お喋りしながら、実は内心心臓バクバクである。

学生寮に入っているのは事実だ。

まさか、『青薔薇連合会』本部から通う訳にもいかないし。

ルーチェスの例があるから、『青薔薇連合会』の息がかかっている場所は危ない。

とはいえ、学生寮に入れたのは、偶然ではない。

学生寮に入りたい学生は、いくらでもいる。

目の前の彼女達もそう。

何せ大学から一番近く、建てたばかりの綺麗な建物で、三食の食事付き。

全室個室でオートロック、エアコン完備となれば、それは人気もあるだろう。

そんな学生寮に、私が入れた理由は一つ。

賄賂だ。

アイズが、大学関係者…の、更に上の関係者に、こっそりと多額の賄賂を握らせた。

その結果、私が優先的に入居出来た訳だ。

ちなみにその賄賂の代金は、しれっと「必要経費」として帝国騎士団に払わせたそうな。

さすがアイズ。

でも、そこまでした甲斐はある。

学生寮なら、『赤き星』が手出しをするのは難しい。

女子寮ということもあって、出入り口の他、あちこちに監視カメラがついているし。

オートロックだし、門限も決まっているから、夜中に忍び込むことは出来ない。

『赤き星』の党員が学生寮の住人だったら、話は別だが。

幸い、ルーチェスの情報によると、『赤き星』の党員は全員、学生寮には入っていないそうだ。

『赤き星』の少数精鋭が災いしたな。

私にとっては、幸いだけれど。

これで、多少なりとも安全は確保出来た。

あとは、踏み込むだけだ。

「ねぇ、話は変わるけど…。学生会に入るには、どうしたら良いのか知ってる?」

私は、彼女達に向かってそう尋ねた。
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