The previous night of the world revolution~T.D.~
「はい!俺大学生やります!」

「却下だ」

俺が、勢いよく手を上げると。

ルルシーが瞬殺。

酷い。

「何でですかぁ…」

「駄目だ。『シュレディンガーの猫』の…ランドエルス騎士官学校に潜入したときも思ったが、俺はお前を二度と学校と名のつく場所に行かせたくない」

あらやだ。

ルルシーったら過保護。

「もー、大丈夫ですって」

いつまで引き摺ってるんですか。

「駄目ったら駄目だ。お前だって分かってるだろ。忘れた振りしてても…お前の中には残ってる」

「まぁ…そうですね」

シェルドニア王国での一件で、嫌と言うほど思い知った。

忘れた、過去のことにしたと思っていても。

俺の中には、まだ残っている。

あの学校での、忌まわしい記憶が。

「でも、今回は高校じゃなくて大学ですよ?」

閉鎖的な中学校や高校と違って、大学はもっと開放的だ。

俺の忌まわしい記憶を想起させるものは、特にないと思うが。

しかし。

「学校と名のつく場所は全部駄目だ」

ルルシーガードが堅い。

まー、俺だって、またランドエルスのときみたいに、ルルシーと離れ離れになるのは嫌だよ?

でも、遠距離恋愛もたまにはアリかなって思うし。

「じゃあアリューシャが行くぜ!それなら問題ないだろ!」

と、元気よく志願するアリューシャ。

「お前、大学がどんなところか知ってるのか?」

呆れ顔のルルシー。

「え?でっかい学校だろ?」

アリューシャの脳内辞書の中身って、どうなってるのか一回見てみたいよね。

「お前みたいなアホが、王立大学に入れる訳ないだろ、馬鹿」

「失敬な!お前アリューシャを舐めてるな?アリューシャはなんとこの間…完璧に九九を言えた!」

「小学校低学年レベルで威張るな!」

「まぁまぁ、ルルシー。アリューシャが九九を覚えたのは良いことだよ。たくさん頑張ったもんねー、アリューシャ」

「うひひ」

アイズに褒められ、満足そうなアリューシャである。

微笑ましい。

「…とはいえ、ルルシー」

「…何だよ」

いやん。そんな睨まないで。惚れそう。

「今は、とりあえず申し出を受ける前提で話し合ってるんですから、『行かない』という選択肢は外しましょうよ」

「分かってるよ。だからこれは、『誰がスパイになるのか』についての話し合いだろ?」

「違いますよ」

「?」

誰がスパイ役を引き受けるのか、ではない。

「『誰がスパイ役になれるのか』という話です」

「…!」

ルルシーも、気づいてくれたようだな。

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